日本公衆衛生雑誌
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人型コミュニケーションロボットを用いた運動プログラムが地域在宅高齢者の身体機能および認知機能に及ぼす影響:予備的試験
谷口 優石井 千惠茅沼 弓子
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2019 年 66 巻 5 号 p. 267-273

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抄録

目的 コミュニケーションロボットが介護従事者と共同して,有効な介護予防活動を実践できるかどうかは不明である。本研究は,人型コミュニケーションロボットと介護スタッフが共同で実施する運動プログラムにより,短期間でも高齢者の身体・心理的機能を向上させるとういう仮説を検証するための予備的試験として,運動プログラムを3か月間実施し,参加者の心身機能に及ぼす影響を調べた。

方法 地域在住高齢者を,人型コミュニケーションロボットを用いた運動プログラムを行う運動実施群20人(女性20人,平均年齢75.0歳)と,調査のみに参加するコントロール群17人(女性16人,男性1人,平均年齢72.9歳)に,継続的な教室への参加の可否および対象者本人の希望に基づいて割り付けた。運動プログラムには,人型コミュニケーションロボットの操作を行う1人の専門職と,運動指導の補佐を行う5人の高齢者ボランティアスタッフを配置し,1回あたりの所要時間は60分~70分に設定した。運動プログラムの実施期間の直前(事前)および3か月間の運動プログラム実施後(事後)に,心身機能の測定を行った。事前調査の2週間前と,事後調査の3週間後にも測定を実施し,調査項目の学習効果および運動プログラムの持続効果についても合わせて検討した。

結果 運動実施群において運動プログラムの実施前後で有意な向上がみられた調査項目は,最大歩行速度(対応のあるt検定:P<0.001)およびMini Mental State Examination(MMSE)得点(P=0.016)であった。コントロール群では,BMI(P=0.007)において有意な向上がみられた。運動実施群における学習効果および持続効果を分析した結果,最大歩行速度およびMMSE得点は,事前調査の2週間前と事前の間(P=0.710, P=0.349)および事後と事後調査の3週間後の間(P=0.298, P=0.723)にそれぞれ有意差はみられなかった。

結論 人型コミュニケーションロボットを用いた運動プログラムが,高齢者の下肢機能および認知機能の向上に寄与することが示唆された。人型コミュニケーションロボットを用いた運動プログラムを健康づくりの場や高齢者施設に導入し,ロボットが非専門職の介護職員と共同することで効果的な運動プログラムを実施できる可能性が示された。

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© 2019 日本公衆衛生学会
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