日本公衆衛生雑誌
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原著
兵庫県養父市におけるシルバー人材センターを機軸としたフレイル予防施策のプロセス評価およびアウトカム評価
野藤 悠清野 諭村山 洋史吉田 由佳谷垣 知美横山 友里成田 美紀西 真理子中村 正和北村 明彦新開 省二
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2019 年 66 巻 9 号 p. 560-573

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抄録

目的 兵庫県養父市にて,2011年よりフレイル予防を目的としたアクションリサーチに取り組んできた。その方策は,「行政区ごとにフレイル予防教室を創る」というものである。最大の特長は,教室の担い手の問題を解決するために,「研修を受けたシルバー人材センターの会員が仕事として市内の各地区に出張し,教室を運営する」ことである。本研究では,このフレイル予防施策(養父モデル)の効果および他地域への応用可能性を示すことを目的とした。

方法 ポピュレーションアプローチの評価モデルであるPAIREMの枠組みに沿って,1拠点目を開設した2014年から2017年までの3年間のプロセスおよびアウトカム評価を行った。アウトカム評価にあたっては,2012年および2017年に市内在住の高齢者を対象に郵送調査法による悉皆調査を実施した(回収率:90.7%,85.7%)。

結果 (1) Plan(計画):運動,栄養,社会プログラムからなる週1回60分,6か月間,全20回の教室を基本コースとし(途中,1.5か月間,全6回の短期コースも創設),終了後は自主運営化を図ることとした。1年目は3地区,2年目以降は10地区ずつ教室を開設することを目標とした。(2) Adoption(採用):3年間で154行政区中36地区(23.4%)が教室を開設した。(3) Implementation(実施):基本または短期コース中の教室出席率の中央値は75.0%であった。(4) Reach(到達):教室参加者は719人であり,参加率は実施地区では32.8%,市全体でみると8.1%であった。(5) Effectiveness(効果):傾向スコアマッチング後のフレイルの有病率は,非参加群では2012年から5年間で13.7%増加したのに対し,参加群では6.8%の増加にとどまった。また,追跡調査時におけるフレイルの有病オッズ比は,非参加群に対して参加群では0.65(95%信頼区間0.46-0.93)と有意に低かった。(6) Maintenance(継続):基本または短期コース終了後も96.2%(25/26拠点)の拠点で週1回の活動が継続された。

結論 フレイル予防教室を行政区ごとに設置するという地域ぐるみの取り組みにより,参加者のフレイルの有病リスクが低減した。また,教室は各地に広がり,到達度,継続率が高かったことから,養父モデルは有効かつ他地域への応用可能性の高いモデルであることが示唆された。

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© 2019 日本公衆衛生学会
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