日本公衆衛生雑誌
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原著
豪雪地帯農村部において生活支援の担い手となる意向を持つ高齢者の特性
伊藤 海村山 洋史田口 敦子大森 純子
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2020 年 67 巻 12 号 p. 860-870

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抄録

目的 高齢化の進展に伴い,心身機能の低下により日常生活に支援を必要とする高齢者が増加していることから,近年,生活支援の担い手となる地域住民の拡充が求められている。中でも,生活支援の担い手となり得る地域住民として,高齢者が携わることに期待が寄せられている。本研究では,生活支援の担い手への意向を持つ高齢者の特性を,細分類した生活支援内容ごとに明らかにすることを目的とした。

方法 対象者は吉島地区に在住し,要介護1~5の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者全数である801人とした。自治会長および隣組長による全戸訪問にて,調査票を配布・回収した。データの収集期間は2018年6~7月であった。調査項目は,基本属性,健康状態,近隣との社会関係,8種類の生活支援内容であった。分析は,実施意向の有無を従属変数,基本属性,健康状態,近隣付き合いの程度の各変数を独立変数とするロジスティック回帰分析を支援内容ごとに行った。

結果 分析対象者は586人であった(有効回答率73.2%)。実施意向に関連していた特性は,性別では,女性であるほど「話し相手・困った時の相談相手」,「食事の準備や掃除・洗濯の手伝い」,「気軽に参加できる集まりやイベントに誘う」への意向が強く,「庭仕事や畑作業などの外回り作業」,「雪かき・雪下ろし」への意向が弱かった。暮らし向きでは,よいと回答した人ほど「通院の送迎や付き添い」への意向が弱く,最終学歴が高いほど「話し相手・困った時の相談相手」,「見守り・安否確認」への意向が強かった。手段的自立評価が高いほど「話し相手・困った時の相談相手」,「見守り・安否確認」,「気軽に参加できる集まりやイベントに誘う」,「買い物の同行・代行」への意向が強かった。また,「食事の準備や掃除・洗濯の手伝い」「庭仕事や畑作業などの外回り作業」以外の6種類の支援内容では,近隣との付き合いの程度が密である者ほど実施意向が有意に強かった。

結論 支援内容によって意向する高齢者の特性が異なることが明らかになった。これらを考慮した上で,担い手の募集や仲介を行うことにより,生活支援への担い手の拡充が期待できる。

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