日本公衆衛生雑誌
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高齢者のジョギング・ランニング活動とQOLに関する一考察
中野 隆之
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2020 年 67 巻 3 号 p. 211-220

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抄録

目的 近年高齢者の間でジョギング・ランニング活動の実施率が以前と比較して高まっている。本研究はジョギング・ランニング活動をおこなう高齢者のQOLの特徴とジョギング・ランニング活動との関連を調査した。

方法 質問紙調査は2014年11月から2015年7月までの間に,7つのマラソン大会会場で60歳から81歳までの83人のマラソン参加者を対象としておこなわれた。性別と年齢のほかに,ジョギング・ランニング活動における走行年数,走行距離(km/月),走行頻度(回数/週),マラソン大会参加回数(回数/年)およびQOLが調査された。QOLはWHOQOL26の質問票により測定された。この質問票は全体,身体的領域,心理的領域,社会的関係,環境領域から構成される。QOLとそれ以外の項目との関連は,相関分析と重回帰分析を使って分析された。

結果 対象者の多くは5年以上の走行年数,1月あたり150 km以下の走行距離,1週間あたり1回から4回の走行頻度,1年あたり1回から10回のマラソン大会の参加回数であった。対象者のうち65歳以上の男女別にQOLをみると,平均値(SD)は男性が3.8(0.4),女性が4.1(0.5)であったが,この得点は,日本の高齢者を対象とした先行研究での得点よりも高いものであった。またジョガー・ランナーによくみられる下肢障害など体の痛みを示すものはみられなかった。

 全体的なQOLが年齢と走行頻度との間で,社会的関係に関するQOLが性別と走行年数との間で,また環境領域に関するQOLが走行年数との間で,それぞれ正の有意な相関が示された。

結論 調査対象となった高齢者にとって可能な限り,より多くの走行頻度と,より長い走行年数を考えたジョギング・ランニング活動をおこなうことと「全体」,「社会的関係」,「環境領域」のQOLの高さとの間に有意な関連があることが示唆された。この研究結果をさらに厳密に解釈するためには,より多くの対象者や変数を使った対照研究,縦断研究が必要である。

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