日本公衆衛生雑誌
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原著
認知症患者の生命予後:日本の一地域の介護保険認定者における観察
國分 恵子堀口 美奈子森 亨
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2020 年 67 巻 5 号 p. 319-326

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抄録

目的 介護保険を初めて申請し,認定された者の5年後の生存状況から生命予後に関連する要因を探る。

方法 某自治体で2年間に新たに介護保険認定を受けた65歳以上の556人について,その後平均4.5年間の死亡状況を,標準化死亡比(SMR)を用いて一般人口と比較し,その関連要因について分析した。

結果 対象者の平均年齢は81.6歳,女性が63%を占めていた。認定後の死亡率(人年法)は全体で16.9%,男が女より高く,また年齢とともに高くなっていた。SMRは,全体では1.80(倍),男>女であるが,年齢は低いほどSMRは高かった。登録時の障害自立度では区分が重度になるほどSMRは高くなるが,認知症自立度ではそのような有意の関連は見られなかった。多変量解析によると,死亡に対して性(男>女),年齢階級(老>若),障害自立度,生活の場(居宅>施設)が有意の要因であった。すなわち死亡のオッズ比は,女で0.35(男=1),95%信頼区間0.24-0.51,年齢階級では65-74歳を基準として75-84歳,85歳以上の区分ごとに1.84(同1.39-2.47),障害自立度では「正常」を基準に各区分ごとに1.38(同1.21-1.58),生活の場では「居宅」を基準に「施設」で0.64(同0.42-0.99)であった。認知症自立度Ⅱa-Ⅳの該当者を暫定的認知症例としてみても以上の所見は同様であった。

結論 介護保険認定高齢者の死亡率は一般人口よりも高く,これは障害者自立度に依存するが,認知症自立度には依存しない。この所見を説明するために更なる研究が必要である。

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