日本公衆衛生雑誌
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特別論文
特別永住者や外国系日本人における日本の高齢者介護サービスへのアクセスの現状と課題:公衆衛生モニタリング・レポート委員会報告
大浦 智子鷲尾 昌一石崎 達郎大坪 徹也安西 将也甲斐 一郎植木 章三矢庭 さゆり藤原 佳典奥村 二郎
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キーワード: 外国人, 高齢者, 医療, 介護
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2020 年 67 巻 7 号 p. 435-441

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抄録

 日本は世界の最長寿国の一つであり,介護リスクが高い75歳以上にも在留外国人が含まれる。今後,外国人の流入の増加や国際結婚などによる国際化が見込まれる日本においては,高齢者に占める外国人や外国系日本人の増加に伴い,日本語を第一言語としない高齢者が介護を受ける機会が増加することが予測される。

 現時点における日本の在留外国人ならびに外国系日本人高齢者(以下,外国系高齢者)の介護について概観するために,医学文献データベースである医学中央雑誌Web(Ver.5)による検索を行った[最終検索日2018年6月2日]結果,205件の論文が抽出され,第一次・第二次抽出手続きを経て,本テーマに該当すると判断された論文は2件のみであった。この2件は主に現在の75歳以上に多いとされる特別永住者である在日韓国・朝鮮人,および中国帰国者と配偶者を対象とした報告であった。

 しかし,外国語を第一言語とする永住者が増えていることを考慮する必要があり,外国系高齢者と介護サービス担当者とのコミュニケーションの障害が外国系高齢者やその配偶者が介護サービスの提供を受ける上で障害となることが予測される。そのため,外国系高齢者が我が国の介護サービスを受ける場合に備えて,情報提供の備えが必要と考えられる。医療においては,医療通訳などの取り組みが各地で散見されるようになり,災害時の外国人への対応が議論されるようになってきた。多文化共生の観点からも,介護保険や医療保険の被保険者である外国人に対する介護保険サービス,医療サービスの提供を適切に行うための方策(ツールの開発・共有,コミュニケーションの取れる職員の配置等)について先駆的取組を共有しながら,横断的に行う必要がある。さらに,コミュニケーションの背景にある,病気や健康への認識についても理解が求められる。

 今後の介護リスクを有する外国系高齢者の介護を考えるうえで,特別永住者はもとより,他国からの永住者の増加を見据え,文化的背景や言語の多様化を考慮した課題を明らかにし,対応を検討する必要がある。

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