日本公衆衛生雑誌
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67 巻 , 7 号
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特別論文
  • 大浦 智子, 鷲尾 昌一, 石崎 達郎, 大坪 徹也, 安西 将也, 甲斐 一郎, 植木 章三, 矢庭 さゆり, 藤原 佳典, 奥村 二郎
    原稿種別: 特別論文
    2020 年 67 巻 7 号 p. 435-441
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

     日本は世界の最長寿国の一つであり,介護リスクが高い75歳以上にも在留外国人が含まれる。今後,外国人の流入の増加や国際結婚などによる国際化が見込まれる日本においては,高齢者に占める外国人や外国系日本人の増加に伴い,日本語を第一言語としない高齢者が介護を受ける機会が増加することが予測される。

     現時点における日本の在留外国人ならびに外国系日本人高齢者(以下,外国系高齢者)の介護について概観するために,医学文献データベースである医学中央雑誌Web(Ver.5)による検索を行った[最終検索日2018年6月2日]結果,205件の論文が抽出され,第一次・第二次抽出手続きを経て,本テーマに該当すると判断された論文は2件のみであった。この2件は主に現在の75歳以上に多いとされる特別永住者である在日韓国・朝鮮人,および中国帰国者と配偶者を対象とした報告であった。

     しかし,外国語を第一言語とする永住者が増えていることを考慮する必要があり,外国系高齢者と介護サービス担当者とのコミュニケーションの障害が外国系高齢者やその配偶者が介護サービスの提供を受ける上で障害となることが予測される。そのため,外国系高齢者が我が国の介護サービスを受ける場合に備えて,情報提供の備えが必要と考えられる。医療においては,医療通訳などの取り組みが各地で散見されるようになり,災害時の外国人への対応が議論されるようになってきた。多文化共生の観点からも,介護保険や医療保険の被保険者である外国人に対する介護保険サービス,医療サービスの提供を適切に行うための方策(ツールの開発・共有,コミュニケーションの取れる職員の配置等)について先駆的取組を共有しながら,横断的に行う必要がある。さらに,コミュニケーションの背景にある,病気や健康への認識についても理解が求められる。

     今後の介護リスクを有する外国系高齢者の介護を考えるうえで,特別永住者はもとより,他国からの永住者の増加を見据え,文化的背景や言語の多様化を考慮した課題を明らかにし,対応を検討する必要がある。

原著
  • 糸井 志津乃, 安齋 ひとみ, 林 美奈子, 板山 稔, 吉田 由美, 風間 眞理, 刀根 洋子, 堤 千鶴子, 奈良 雅之, 鈴木 祐子, ...
    原稿種別: 原著
    2020 年 67 巻 7 号 p. 442-451
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では病院で活動しているがんピアサポーターが大事にしていることを明らかにすることを目的とする。

    方法 質的記述的研究方法を用いた。研究協力を承諾した患者会団体から研究参加候補者の紹介を受けた。研究参加に同意したがんピアサポーター10人に半構造化面接を2014年7月から10月に実施した。逐語録より,がんピアサポーターが大事にしていることを抽出した。文脈を単位としてコードを生成し,さらにサブカテゴリー化,カテゴリー化を行い分析した。本研究は目白大学研究倫理審査委員会の承認を得て,その内容を遵守して実施した。

    結果 研究参加者は病院を活動の場とし,個別相談,がんサロンで活動中の40歳代から70歳代の10人(男性2人,女性8人)のがんピアサポーターである。医療機関で活動しているがんピアサポーターが大事にしていることとして,129コード,11サブカテゴリーから5つのカテゴリーが生成された。カテゴリーは【傾聴しありのままを受け止め,利用者が方向性を出せるようにする】【医療者とは違う立場をわきまえ,対応する】【心持ちを安定させ,生活とがんピアサポート活動とのバランスを考える】【知識や技術を担保し,自分を磨き続ける】【医療者,病院との信頼関係を築く】である。

    結論 病院で活動しているがんピアサポーターが大事にしていることは,以下のようであった。まず,利用者を対象に,【傾聴しありのままを受け止め,利用者が方向性を出せるようにする】【医療者とは違う立場をわきまえ,対応する】である。これは“がんピアサポート活動の実践中に利用者のために大事にしていること”であり,大事にしていることの中心を成している。次に,がんピアサポーター自身を対象に,【心持ちを安定させ,生活とがんピアサポート活動とのバランスを考える】【知識や技術を担保し,自分を磨き続ける】である。これは“がんピアサポート活動の継続と質の向上のために大事にしていること”であり,支援体制や学習環境の整備が課題である。さらに,【医療者,病院との信頼関係を築く】である。これは“がんピアサポート活動を円滑にするために大事にしていること”である。医療者・病院との信頼関係の重視は,病院でのがんピアサポート活動の特徴と言える。本研究の結果は,がんピアサポート活動を振り返る視点になると考えるが,今後の課題としてがんピアサポーター養成講座への活用の検討が必要である。

  • 村山 幸子, 倉岡 正高, 野中 久美子, 田中 元基, 根本 裕太, 安永 正史, 小林 江里香, 村山 洋史, 藤原 佳典
    原稿種別: 原著
    2020 年 67 巻 7 号 p. 452-460
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    目的 地域住民間のコミュニケーションの活性化や,子どもの公共心および社会性の醸成等を目的として,多くの自治体や小中学校で「あいさつ運動」が実践されている。しかし,こうした取り組みの意義を裏付ける実証データは乏しい。本研究では,1)周囲の人々からあいさつをされることが子どもたちの自発的なあいさつ行動と関連するのか,また,2)子どもたちにとって日常生活場面におけるあいさつの多寡が,地域愛着と援助行動と関連するのかを検証する。

    方法 東京都A区および神奈川県川崎市B区在住の小学4-6年生の児童1,346人と中学1-2年生の生徒1,357人を対象に自記式の質問紙調査を実施し,2,692人から有効回答が得られた。本研究では,小学生と中学生のデータを層別に分析し,それぞれについて以下の統計解析を行った;1)性別と学年を制御変数とし,周囲の人々からあいさつをされる頻度と児童・生徒が自らあいさつをする頻度の関連を検証する偏相関分析と,2)児童・生徒のあいさつ頻度と,居住地域への愛着および援助行動の関係を検証するパス解析を実施した。

    結果 偏相関分析の結果,調査対象者の性別と学年を問わず,周囲の人々からあいさつをされる頻度と,児童・生徒が自らあいさつをする頻度との間に正の相関関係が認められた。さらに,パス解析の結果,あいさつをされる頻度が地域愛着と関連し,あいさつをする頻度が地域愛着および援助行動と関連するというモデルが得られた。当該モデルは,小学生と中学生の双方で高い適合度が認められた。

    結論 子どもたちにとって,日常生活場面で周囲の人々とあいさつを交わすことは,居住地域への愛着を強めることが明らかとなった。とりわけ,彼らが自発的にあいさつをすることは,他者への援助という具体的な行動にも結びつくことが明らかとなり,家庭・学校・地域であいさつを推奨することの意義が実証された。あいさつされる頻度とあいさつする頻度に関連が認められたことから,周囲の大人による働きかけが,子どもたちに自発的なあいさつ行動を定着させる上で重要になると考えられる。

  • 西岡 大輔, 上野 恵子, 舟越 光彦, 斉藤 雅茂, 近藤 尚己
    原稿種別: 原著
    2020 年 67 巻 7 号 p. 461-470
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    目的 経済的困窮や社会的孤立など,生活困窮状態は健康の社会的リスクであり,医療的ケアの効果を阻害する要因でもある。近年,患者の社会的リスクに対応する医療機関の取り組みが広がりを見せつつあり,その対象者を適切にスクリーニングできる方法の確立が求められる。そこで,医療機関で活用することを想定した生活困窮評価尺度を開発しその妥当性と信頼性の一部を検証した。

    方法 5つの医療機関を新規に受診した成人を対象に横断研究を実施した。生活困窮に関する25の質問の回答結果を用いて探索的因子分析を行った。反復主因子法により因子数を規定し因子を抽出した。プロマックス回転を用いた。抽出された因子の妥当性と信頼性を検証した。信頼性の検証には標準化クロンバックα係数を算出した。得られた結果から因子負荷量が高い設問を選択し,簡易尺度の問診項目を選定した。

    結果 対象者は265人であった(回答率:75.1%)。因子分析の結果,経済的困窮と社会的孤立の2因子が抽出され,因子負荷量が0.40以上のものとして,経済的困窮尺度では8問,社会的孤立尺度では5問が主要な設問の候補として抽出された。標準化クロンバックα係数は,経済的困窮尺度で0.88,社会的孤立尺度で0.74であった。さらに,簡易尺度の問診項目を各因子の因子負荷量が高いものから2項目ずつ選定した。すなわち「この1年で,家計の支払い(税金,保険料,通信費,電気代,クレジットカードなど)に困ったことはありますか。」「この1年間に,給与や年金の支給日前に,暮らしに困ることがありましたか。」「友人・知人と連絡する機会はどのくらいありますか。」「家族や親戚と連絡する機会はどのくらいありますか。」であった。

    考察 医療機関で患者の生活困窮を評価することを想定した尺度を開発し,一定の妥当性・信頼性を確認した。尺度の実用化に向けては,保健・医療・介護・福祉・地域社会の十分な連携のもと,質問項目の回答に対するスコアリングと地域や医療機関の特性に応じた本尺度のカットオフ値の設定,さらなる一般化可能性の検証等が必要である。

資料
  • 町田 宗仁, 大澤 絵里, 野村 真利香, 曽根 智史
    原稿種別: 資料
    2020 年 67 巻 7 号 p. 471-478
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    目的 将来的な国際保健政策人材となることが期待される,日本人の国際保健人材が,より多く国際的組織に採用されるために,国際的組織で求められるスキルやコンピテンシーの獲得に繋がるキャリアパスや,国際保健人材育成の際に考慮すべき支援内容の抽出を目的として,国際的組織に勤務する保健関係日本人職員9人に聞き取り調査を実施した。

    方法 調査期間は2017年10月から2018年2月であった。質問項目は,①基本属性(年代,現所属組織,現所属先の職位,留学経験,現場・フィールド経験,採用前の職業)に加え,②国際機関に応募することになったきっかけ,③現在の仕事をする上でとくに重要だと感じている能力やコンピテンシー,④国際機関に採用されるために結果として役立ったこと,⑤国際機関で働く前の在職中ないし在学中の準備,⑥国際機関で受けた面接の内容,⑦これから一人でも多くの日本人が国際機関に採用されるために必要な後押しの7項目とした。

    結果 9人全員が修士課程以上の海外留学とフィールド経験を有していた。留学,語学,フィールド経験,ネットワーク,専門性が採用に役に立っていた。職務上の重要な経験,能力,コンピテンシーとして,海外での修士号,フィールドの経験,サブ(業務に関する専門性),スキル(業務を遂行する上で必要な技術)が挙げられた。応募準備として,語学,履歴書作成や面接対策が行われていた。面接では,国際機関等から示されているコンテンツ,公募情報の内容,マネジメント能力に関して質問されていた。今後,多くの日本人を国際機関に送り出すためには,現場経験を積むための環境,ポストを得やすくするためのプログラム創設,国際機関の意思決定プロセスへの日本人の関与,政治的サポート,公募ポストの周知が挙げられていた。

    結論 将来的に国際的組織で勤務を希望する者は,語学習得の機会,海外留学,また,現場・フィールド経験を積むキャリアパスにより,まずは国際機関との繋がりが持てる仕事,経験を得ることに繋げられるという流れが考えられ,これらを通じてコンピテンシーも体得でき,採用に関して望ましい方向に働くことが一定程度明らかとなったと言える。また,採用試験準備,公募情報の周知や理解の促進等は,人材育成支援策のポイントであり,採用試験に向けた研修等を提供する組織的活動は,将来的に一人でも多くの日本人を国際保健人材として送り出せる可能性を生むものと考えられた。

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