日本公衆衛生雑誌
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原著
市町村国保の特定健診受診者におけるultra-processed foodsの利用と栄養素等摂取状況および肥満度との関連
小岩井 馨武見 ゆかり林 芙美緒方 裕光坂口 景子赤岩 友紀嶋田 雅子川畑 輝子中村 正和
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2021 年 68 巻 2 号 p. 105-117

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抄録

目的 国外では食品・料理を加工度別に分ける国際的な枠組みであるNOVAシステムを用いて,最も加工度の高い食品・料理グループのultra-processed foods(UPF)の過度な利用が肥満等の健康課題につながることが示されているが日本での報告はない。そこでUPFの利用と栄養素等摂取状況,肥満度との関連を明らかにすることを目的とした。

方法 2017年,神奈川県真鶴町にて40~74歳の市町村国保健診受診者を対象に質問紙調査・3日間の食事調査を行い,健診結果データを入手した。解析対象者は解析項目がすべて揃った169人(男性66人,女性103人)とした。食事調査結果をNOVAシステムの4区分に整理し,UPFのエネルギー割合(外食・アルコールからのエネルギーを除く総エネルギー摂取量に占めるUPFのエネルギー割合)を算出した。UPFエネルギー割合3分位で群分けを行い,栄養素等摂取状況,肥満度等の比較を行った。年齢,性,世帯構成,学歴,世帯収入,総エネルギー摂取量(エネルギー産生栄養素バランス,体重あたりたんぱく質,肥満度以外の項目で投入)を調整した共分散分析による傾向性の検定,多重ロジスティック回帰分析等を行った。肥満度との関連ではさらに活動レベル,喫煙状況を調整した。

結果 解析対象者の約75%が65歳以上の高齢者であった。UPFエネルギー割合の平均値(標準偏差)は29.7(15.0)%であった。UPFエネルギー割合高群ほど総エネルギー摂取量が有意に高い一方で,たんぱく質エネルギー比率,体重あたりたんぱく質,食物繊維,ビタミンA・E・K・B1・B6・C,ナイアシン当量,葉酸,カリウム,マグネシウム,鉄の摂取量が有意に低かった。日本人の食事摂取基準(2015年版)のビタミンA・B1・B6・C,マグネシウムの推定平均必要量未満,すなわち不足のリスクが高くなるオッズ比はUPFエネルギー割合高群が低群に比べ有意に高かった。肥満となるオッズ比(95%CI)もUPFエネルギー割合高群は4.51(1.50-13.57)と低群に比べ有意に高かった。

結論 前期高齢者を中心とした集団においてUPFの利用が多い者はたんぱく質の摂取が少なく,複数のビタミン,ミネラルの不足のリスクが高かった。一方でエネルギー摂取量は多く,肥満となるオッズ比も高かったことから,UPFの過度の利用は留意が必要と示唆された。

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