日本公衆衛生雑誌
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高齢者の健診結果と死亡・要介護発生との関連:国保データベース(KDB)システムを活用した分析
栗田 淳弘中村 好一
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2023 年 70 巻 1 号 p. 16-26

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抄録

目的 高齢者の健診結果と死亡・要介護発生との関連を明らかにする。

方法 栃木県の後期高齢者医療被保険者のうち,2020年度に健診を受診し,要支援・要介護認定を受けていない75歳以上の男女53,651人(男24,909人,女28,742人)を対象とし,健診受診日から2021年8月末までの死亡,自立喪失(死亡又は要介護2以上)の発生について観察した。健診結果について特定健診の受診勧奨判定値等を基準に2群に分け,カプラン・マイヤー法による1年生存率および1年自立率の算出,コックスの比例ハザードモデルによる死亡ハザード比および自立喪失ハザード比の推定を行った。

結果 観察期間中の死亡は424人(男281人,女143人),自立喪失は1,011人(男529人,女482人)であった。1年生存率および1年自立率は血清アルブミン低値が0.920~0.958で男女ともに最も低かった。コックスの比例ハザードモデルで年齢階層・BMI階層・後期高齢者質問票の回答を調整変数として解析した結果,男では血色素低値の死亡ハザード比が3.05[2.00-4.64],自立喪失ハザード比が2.58[1.87-3.56]で最も高く,女では血清アルブミン低値の死亡ハザード比が5.87[2.45-14.07],自立喪失ハザード比が3.00[1.70-5.29]でとくに高かった。高齢者健診の受診者の自立喪失等について分析した先行研究では,後期高齢者における低アルブミン血症の死亡ハザード比は2.7[1.2-6.0],貧血の死亡ハザード比は1.8[1.1-2.9]であり,本研究の結果は先行研究よりも高い傾向であった。血清アルブミン低値と脳卒中との関連を示す先行研究および血色素低値と死亡との関連を示す先行研究等があり,栃木県は脳血管疾患や心疾患の年齢調整死亡率が高いことから,これらの疾病のリスク因子を有する者に低栄養が加わることで,先行研究と比較して血清アルブミン低値や血色素低値のハザード比がとくに高い結果となった可能性が考えられる。

結論 本研究により,栃木県において高齢者の低栄養は死亡・要介護発生との関連が高いこと,および地域によって高齢者の死亡リスクおよび自立喪失リスクの傾向が異なることが明らかになった。

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