日本公衆衛生雑誌
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特別論文
高齢者の市中肺炎(院外肺炎)の危険因子とインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチン接種:公衆衛生モニタリング・レポート委員会報告
鷲尾 昌一石崎 達郎植木 章三藤原 佳典大浦 智子安西 将也甲斐 一郎奥村 二郎大坪 徹也矢庭 さゆり島本 太香子渡辺 修一郎
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2023 年 70 巻 6 号 p. 351-358

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抄録

 肺炎は日本人高齢者の主な死因の一つである。高齢者の多くは加齢に関連した基礎疾患を持っており,肺炎罹患後に心不全など別の系統の疾患を引き起こす傾向がみられる。それゆえ,高齢者の肺炎予防は大切である。日本公衆衛生学会公衆衛生モニタリング・レポート委員会「高齢者のQOLと介護予防,高齢者の医療と福祉グループ」では,高齢者の市中肺炎(院外肺炎)の危険因子と予防対策についての知見をとりまとめた。高齢者の肺炎には体外から侵入した病原微生物による肺炎と不顕性誤嚥による肺炎があり,低栄養や身体機能低下を認める高齢者では肺炎のリスクが上昇する。一方,インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種は高齢者の肺炎のリスクを低下させる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行した2020年はインフルエンザ死亡や肺炎死亡が減少しており,COVID-19に対する非薬学的感染予防対策は肺炎の予防にも有効と考えられる。高齢者の院外肺炎予防のためには①マスク着用などの病原微生物の曝露を避ける感染対策(COVID-19予防でも推奨された非薬学的感染予防対策),②インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種勧奨,③不顕性誤嚥の原因となる仮性球麻痺を引き起こす脳血管疾患を防ぐための生活習慣病の適切な治療と保健指導,④誤嚥性肺炎の原因菌(口腔内細菌)を減少させる口腔衛生・口腔ケア,⑤肺炎のリスクとなる低栄養や身体機能低下を予防する保健指導が大切である。

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© 2023 日本公衆衛生学会
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