日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
手紙と電話による特定保健指導の利用再勧奨の効果:都市部における保健指導利用に積極的な層への無作為化比較試験
村山 洋史 嶋田 誠太朗髙橋 勇太
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2023 年 70 巻 6 号 p. 381-389

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抄録

目的 特定保健指導の実施率向上のため,各医療保険者は利用再勧奨を行っているが,その効果は十分に検証されていない。本研究は,特定保健指導の利用再勧奨の手法として手紙と電話の2種類を取り上げ,特定保健指導対象者への利用再勧奨の効果を無作為化比較試験によって検討することを目的とした。

方法 神奈川県横浜市の国民健康保険加入者で2020年度の特定保健指導対象者のうち,特定健康診査の問診項目から判定した保健指導利用に積極的な者を対象とした。介入期間は2020年9~11月であり,この期間の対象者252人を,「再勧奨なし群」「手紙再勧奨群」「電話再勧奨群」の3群に無作為に割り付けた(各群84人)。「手紙再勧奨群」には,特定保健指導利用券を送付した2週間後に再勧奨の通知を郵送した。「電話再勧奨群」には,同じく利用券送付2週間後に保健師が電話にて再勧奨を行った。アウトカム項目は,特定保健指導の利用率であった。解析は,カイ二乗検定による3群間比較と多重比較を行った。

活動内容 対象者は,男性が70.6%,平均年齢は61.4歳(標準偏差:11.0)であった。属性と特定健康診査の結果で3群間に違いはなかった。特定保健指導利用率は,「再勧奨なし群」で20.2%,「手紙再勧奨群」で22.6%,「電話再勧奨群」で20.2%であり,3群間の差は認められなかった(χ2=0.191, P=0.909)。多重比較でも,いずれの群間にも差はみられなかった。ただし,直接本人や家族に電話で再勧奨を行えた者は56.0%であり,直接電話再勧奨を行えた者の方が直接電話再勧奨を行えなかった者よりも利用率が高かった。

結論 手紙による再勧奨も電話による再勧奨も,再勧奨しない場合と比べ,特定保健指導の利用率に違いはなかった。電話再勧奨の効果は過小に評価されている可能性がある点には注意を要するものの,保健指導利用に積極的な層への利用再勧奨は優先度を低く設定しても良い可能性が示された。

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