日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
地域在住尿失禁中高年女性を対象とした非対面での歩行・筋力トレーニングの効果について:無作為化比較試験による検討
亀尾 洋司須藤 元喜山城 由華吏宮村 猛史金 憲経
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 71 巻 1 号 p. 15-23

詳細
抄録

目的 尿失禁の改善では対面で指導する運動療法の有効性は報告されているが,非対面での指導については報告が十分とは言えない状況である。本研究では,地域在住中高年尿失禁女性を対象として非対面の歩行や筋力トレーニング指導による尿失禁の頻度,量およびQOL改善効果を明らかにする。

方法 対象は,46–64歳女性かつ主観的評価による腹圧性尿失禁有症者68人とした。対象者を無作為割付にて,介入群(n=34)と対照群(n=34)に振り分けた。介入群に対しては,事前に収録した動画にて効果的な歩き方および段階的な歩数の増やし方について指導を行った。加えて,家庭でできる歩行機能の改善を目指す筋力強化など包括トレーニングプログラムについて,ビデオを活用した非対面指導を行った。対照群に対しては,普段通りの生活を送るように指示した。介入期間は12週間とした。主要評価項目である尿もれ頻度スコア,尿もれ量スコア,QOL阻害の程度は,ICIQ-SF QOL質問票(International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form)を用いて介入前後で比較した。歩数増が主要評価項目に及ぼす影響を解明するために,介入群において,介入前後の歩数増加率を算出し,中央値を境に歩数増加率高群(n=16)および歩数増加率低群(n=16)についてサブ解析を行った。

結果 介入12週間後の尿漏れ頻度スコア,尿漏れ量スコア,ICIQスコアのすべてにおいて,群間比較での有意差を確認した(P<0.05)。さらに歩数増加率高群でのみ,8週間から尿もれ頻度スコア,ICIQ-SFスコアともに有意な改善傾向を示した。

結論 本研究は,オープンラベル試験のため,主観的アウトカム評価にバイアスが内在している可能性を考慮した上での解釈が必要である。地域在住尿失禁中高年女性を対象として,非対面で行う指導であっても,歩行および筋力トレーニングによる介入は,尿もれ症状の改善および尿もれによるQOL阻害程度の改善に有効であることが示唆された。さらに,介入により歩数の増加を促すことでより大きな効果が期待できることが示唆された。

著者関連情報
© 2024 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top