日本公衆衛生雑誌
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保健師数と精神保健福祉相談・難病相談被訪問指導延人数の関連および地域差の検討
赤松 友梨尾島 俊之福永 一郎逢坂 悟郎佐伯 圭吾島村 通子白井 千香永井 仁美宮園 将哉内田 勝彦
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2024 年 71 巻 3 号 p. 167-176

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抄録

目的 現場から保健師数の充実を求める声はあがっているものの,客観的に保健師数と保健活動の充実に関連があることを示す報告は少ない。今回我々は,対人保健業務の中でもとくに保健師数が少ないと実績をあげにくいと考えられる精神保健福祉および難病相談の訪問指導に着目し,保健師数との関連について検討した。また,これまで保健師数や精神保健福祉・難病活動に関する地域差が指摘されていたが,その程度は明らかになっていなかったため,その点についても検討した。

方法 2019年度の政府統計の総合窓口(e-Stat)中の地域保健・健康増進事業報告および2020年1月時点の住民基本台帳に基づく人口動態および世帯数調査のデータを使用した。人口10万人あたりの常勤保健師数(保健師数)と人口10万人あたりの精神保健福祉/難病相談の被訪問指導延人数(精神保健福祉/難病相談実績)の関連について,回帰分析(共変量には人口および面積を用いた)を行った。また,保健師数,精神/難病相談実績の各々について,平均値・標準偏差・最大/最小値・ジニ係数を用いて地域差を検討した。いずれも,総数・県型保健所・県型保健所管内市町村・保健所設置市(特別区含む)・保健所設置市(特別区含まない)の分析対象ごとに分析を行った。

結果 回帰分析では,保健師数と精神保健福祉/難病相談実績は正の関連を認める傾向で,いずれの相談実績も,人口規模(人口を十万で割ったもの)とは正の関連を,面積規模(面積 km2 を千で割ったもの)とは負の関連の傾向であった。保健師数と相談実績に有意な関連を認める中で最も回帰係数が大きかったのは,精神保健福祉相談実績では県型保健所管内市町村で34.07,難病相談実績では県型保健所で5.48であった。ジニ係数を用いた地域差の分析では,保健師数が最も地域差が小さく(総数のジニ係数0.15),難病相談実績が最も地域差が大きかった(総数のジニ係数0.34)。さらに総数の最大値/最小値は,保健師数が3.8倍に対し,精神保健福祉相談実績10.6倍,難病相談実績30.0倍であった。

結論 保健師数を充実させることは,精神保健福祉/難病相談活動をさらに充実させていくために必要であり,とくに人口規模が小さい都道府県や面積が広い都道府県ではより多めに保健師数を充実させることが重要である。また,精神保健福祉/難病相談活動に地域差があり,底上げを推進する必要がある。

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