日本公衆衛生雑誌
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原著
幼児の健康・食行動・生活習慣への保護者の心配事とその関連要因:食育への展開を視野に
堀江 早喜石川 みどり森永 裕美子横山 徹爾
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2024 年 71 巻 4 号 p. 209-219

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抄録

目的 乳幼児期の食生活は将来の健康状態に与える影響が大きい。わが国では乳幼児栄養調査の結果,約80%の保護者は子どもの食事の心配事を抱えており,本研究は離乳期以降の食に焦点を当て,乳幼児健康診査(1歳6か月児・3歳児対象,以下幼児健診とする)における保護者の心配事に影響する児の食事や家庭環境要因について検討した。

方法 対象は2019年3月~2020年1月に東北・中部・中国地方の幼児健診において,調査協力の得られた対象者のうち無効回答を除く646人を解析対象とした。調査項目は児の食事内容・生活習慣・健康の心配事56項目(はい・いいえで回答),児の属性,食品の摂取頻度(6選択肢18種)等を尋ねた。心配事の因子分析により抽出された各因子について,「はい」と回答した項目数を心配事得点とし,食品摂取頻度および属性との関連を解析した。

結果 心配事30項目4因子が抽出された。第1因子は「おやつの摂取回数,時間のこと」等の【健康意識・生活習慣】,第2因子は食品・食材の組合せ等の【食事の雰囲気・内容】,第3因子は遊び食べ等の【食事への関心・意欲】,第4因子は料理作り体験等の【食経験・行動】であった。因子と要因の関連は,1.6歳は【健康意識・生活習慣】「はい」の回答が多い高得点と卵,果物の低摂取,甘い菓子,塩味菓子の高摂取,経済的ゆとりなし,時間的ゆとりなし,【食事の雰囲気・内容】高得点と緑黄色野菜,その他の野菜,海藻,果物の低摂取,経済的ゆとりなし,【食事への関心・意欲】高得点と魚,卵,緑黄色野菜の低摂取,甘味飲料・甘い菓子の高摂取,経済的ゆとりなし,【食経験・行動】高得点と穀類(パン)の高摂取,経済的ゆとりなしが関連した。3歳は,【健康意識・生活習慣】高得点と大豆・大豆製品,緑黄色野菜,果物の低摂取,塩味菓子,ファーストフードの高摂取,経済的ゆとりなし,【食事の雰囲気・内容】高得点と魚,大豆・大豆製品,緑黄色野菜,その他の野菜,海藻,果物の低摂取,男児,時間的ゆとりなし,【食事への関心・意欲】高得点と穀類(ごはん),大豆・大豆製品,緑黄色野菜,その他の野菜,海藻,果物の低摂取,塩味菓子の高摂取,出生順位1位,【食経験・行動】高得点と男児であった。

結論 離乳期以降の児を持つ保護者が抱える4つの心配事因子を抽出し各因子と集団特性との関連要因が明らかとなった。

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