日本公衆衛生雑誌
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原著
保育所に通う幼児における家庭の経済状況と食品群別摂取量の関連
酒井 亜月由田 克士高橋 孝子岡部 哲子佐々木 ルリ子石田 裕美緒方 裕光原 光彦吉岡 有紀子野末 みほ坂本 達昭伊藤 早苗村山 伸子
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2024 年 71 巻 4 号 p. 220-230

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抄録

目的 近年,世帯収入と食事摂取状況との関連について研究が進んでいるが,成人や児童を対象としたものが多く,幼児をターゲットとした研究はほとんど認められない。収入による食生活への影響に起因した健康格差を是正するためには,学童期や成人期以降のみならず,幼児期からの対策が講じられる必要があると考える。本研究では,児童福祉施設(以下保育所)に通う3~6歳の幼児を対象に,等価所得と食品群別摂取量および食事バランスガイドの指標との関連を明らかにし,より望ましい対策を講ずるための根拠を得ることを目的とした。

方法 2019年あるいは2020年の10~12月の連続しない平日2日と休日2日の計4日間について秤量記録法または目安量記録法による食事調査と,食生活状況に関する自記式質問紙調査を実施した。対象者は全国の7都市の保育所に通う幼児761人(男児423人,女児338人)である。食生活状況調査で得られた1年間の世帯収入と家族人数から等価所得を求め,5分位で5群に分けて食品群別摂取量を比較し,東京都が作成した幼児向け食事バランスガイドの指標を用いて各群のサービング数未満の幼児の割合を比較した。

結果 等価所得群間に身長,体重,肥満度の差はみられなかった。等価所得が高い群ほど穀類の摂取量は減少傾向にあり,砂糖・甘味料類,緑黄色野菜,乳類の摂取量は増加傾向にあった。料理区分でみると,平日では等価所得が高い群ほど主食のサービング数は減少傾向に,副菜,牛乳・乳製品,果物は増加傾向にあった。また,牛乳・乳製品では,食事バランスガイドの目安量未満の児の割合が5群間で有意差が認められ,Q1で最も多かった。

結論 等価所得が低い群ほど穀類の摂取量が多く,野菜,果物の摂取量が少なかったことは,成人や児童を対象とした研究とほぼ同様の結果を示した。保育所に通う幼児において,世帯の経済状況と食品群別摂取量が関連することが示唆された。幼児期の所得による格差を是正する対策と幼児をもつ世帯全体に向けた対策など多角的な支援が求められる。

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