日本公衆衛生雑誌
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特定健康診査の標準的な質問票の活用に関する実態調査
杉田 由加里 鈴木 悟子齋藤 良行赤松 利恵田原 康玄中山 健夫
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2024 年 71 巻 4 号 p. 231-239

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抄録

目的 特定健康診査(以下,特定健診)の問診において利用者に保健行動を尋ねることは,日頃の保健行動への気づきを促し,改善意欲を惹起する第一歩となる。特定健診の標準的な質問票は22項目からなり,特定保健指導の階層化に必要な項目以外を問診票に用いるかは任意となっている。標準的な質問票の活用の実態を明らかにすることは,2024年度から始まる第4期特定健診・保健指導の運用方法に資する資料を提示できると考えた。

 本研究の目的は,標準的な質問票を,①特定健診の問診票に用いているか,②特定保健指導や生活習慣病予防を目的とした保健事業に活用しているか,③データヘルス計画の立案・実施・評価において利用しているかを明らかにすることである。

方法 全国の全市区町村の国民健康保険担当部署(以下,市町村国保)1,741か所,全国健康保険協会(以下,協会けんぽ)支部47か所,健康保険組合(以下,組合健保)1,391か所の特定健診・保健指導業務の主担当者1人,合計3,179人に対して,特定健診,特定保健指導の実施状況に関する自記式の調査を実施した(2022年2月)。調査の実施にあたり筆頭著者の所属機関の倫理審査委員会の承認を受けた。

結果 有効回答数は1,221件(38.4%)であり,内訳は市町村国保が816件(46.9%),協会けんぽが47件(100%),組合健保が358件(25.7%)であった。特定健診の問診票に標準的な質問票の全項目を用いていたのは,集団方式では96%以上,個別方式では93%以上の保険者であった。しかし,『生活習慣の改善について保健指導を受ける機会があれば,利用しますか』については,187件(18.2%)が活用しづらいという回答であり,特定保健指導の利用が希望制であると誤解されるという理由であった。また,データヘルス計画における標準的な質問票の利用状況については,5割にとどまっていた。

結論 実態から,標準的な質問票の全項目を必須な項目としても運用に差し支えない状況と考える。しかし,『生活習慣の改善について保健指導を受ける機会があれば,利用しますか』については改変の必要性がある。標準的な質問票の活用には地域の健康状態の比較に資することが意図されている。データヘルス計画における標準的な質問票の利用について,保険者および支援する者はさらに積極的な利用となる工夫が必要である。

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