2025 年 72 巻 9 号 p. 591-595
全粒穀物は,外皮や胚芽に豊富な栄養素を含み,精製穀物よりも高い栄養価を有することから,非感染性疾患の予防に寄与する食品として国際的に注目されている。世界保健機関や国連食糧農業機関は,全粒穀物を健康的かつ持続可能な食事の一部として推奨しており,複数の国では食事ガイドラインに明記されている。一方,日本では全粒穀物の明確な定義や摂取推奨がなく,摂取量も他国と比べて極めて低い。本稿では,全粒穀物摂取の公衆衛生学的および医療経済学的意義に関する国際的知見を整理したうえで,日本における代表的な全粒穀物である玄米に焦点を当て,その摂取状況と課題を検討した。玄米摂取は2型糖尿病リスクの低下と関連しているが,日本での摂取頻度は低く,味,調理の手間,入手の難しさなどが普及の障壁となっている。また,白米の一部を玄米に置き換えることで,2型糖尿病の予防や医療費の抑制につながる可能性がある。栄養・健康教育の強化,食品事業者との連携,学校給食や職域での導入など,多面的な取り組みにより玄米をはじめとする全粒穀物の摂取を促進することが,長期的に国民の健康増進と社会保障費の抑制に資すると考えられる。