2026 年 73 巻 2 号 p. 199-208
目的 特定健診の効果を最大化するには受診率の向上が不可欠であり,各自治体は様々な工夫をしている。しかしそれらは明文化されることなく暗黙知のまま散逸していることが多い。このような背景のもと,本研究では受診率向上に向けた各自治体の工夫を明文化し実態を明らかにすること,また,その工夫の実施状況と対象者数の規模および受診率との関連を検討することを目的とした。
方法 山形県の全35市町村国民健康保険を対象とし,35市町村からは共通様式「保健事業カルテ」にて,加えて2市町からはヒアリングで受診率向上に向けた工夫を収集した。次いで収集された工夫を専門家チームが業務フロー別に6カテゴリーに分類した。この6カテゴリー47項目で構成されたアンケートを県内全35市町村を対象に実施した。アンケートにより把握された工夫の実施状況と対象者数の規模および受診率をFisherの正確確率検定にて比較し,規模による工夫の違いと受診率を上げる要素を検討した。有意水準は両側5%とした。
結果 アンケートの回答率は100%であった。カテゴリー別では,受診勧奨の工夫が最も多く(19項目),次いで周知の工夫(10項目)が多かった。特定健診対象者数の中央値(2,463人)を基準に市町村を2群に分けて工夫の実施状況を比較したところ,「医師会と事業の進捗や課題に関して定期的に会議・意見交換をしている」については,対象者数の多い市町村の方が多く実施しており,有意差を認めた。受診率についても同様に中央値(52.9%)を基準に群間の差を検定したところ,「対象者を絞って受診勧奨をしている」,「勧奨業務(郵送)を外部委託している」,「受診勧奨通知を2回以上送付している」の3項目について有意差を認めた。いずれも受診率が低い群の方が各工夫を実施している割合が高かった。一方,調査対象としたすべての工夫において受診率との有意な正の関連を認めなかった。
結論 特定健診の受診率向上に向けて市町村が行っている工夫を明文化し事業内容の実態を明らかにすることができた。対象者数の規模による工夫の違いも明らかとなり,今後自治体の規模に応じた取組を検討する上での参考となる。一方,受診率が高い市町村が多く実施する工夫の識別はできなかった。今回は一県の限られたデータであることから,受診率向上のために今後は他県を含めて継続的に調査し知見を集積していく必要がある。