日本公衆衛生雑誌
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妊娠期における乳幼児揺さぶられ症候群の教育的動画視聴による知識向上効果の検証
三瓶 舞紀子藤原 武男伊角 彩
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ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 20-061

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抄録

目的 欧米の研究では,妊娠期や出産後早期に泣きに関する知識やその対処に関する知識教育をすることで,乳幼児揺さぶられ症候群を予防できるといわれている。しかし本邦で妊娠期におけるこれらの教育の効果を検証した研究はない。本研究では,厚生労働省が作成した乳幼児揺さぶられ症候群予防のための教育的動画「赤ちゃんが泣きやまない」を妊娠期に視聴することによる知識向上に関して検証することを目的とした。

方法 2013年4月1日~2014年3月31日の間に全国の46自治体で,妊娠中の両親学級の機会を利用して教育的動画の視聴と効果検証のための調査票の配布を行った。調査票の主な項目は,本人および家族の属性,妊娠がわかった時の状況,泣きおよび揺さぶりに関する知識であり,泣きおよび揺さぶりに関する知識についてはビデオ視聴後にも確認した。5,246人に調査票を配布し4,769人から回収し(回答率91%),泣きに関するおよび揺さぶりに関する知識について回答がある4,647人(有効回答率89%)を分析対象とした。

 これまでの研究と同様に,泣きに関する知識については「赤ちゃんが泣いているときにいつもどこか具合が悪いサインだと思いますか」など計6問,揺さぶりに関する知識については「泣き止ませるために赤ちゃんを激しく揺さぶることは,良い方法だと思いますか」など計2問で測った。4件法による回答を0~3点とし,それぞれ動画視聴の前後で合計点を0-100点に換算し前後比較した。さらに属性に関して層別化および前後の増加分に対する回帰分析を行った。

結果 泣きに関する知識については,視聴前後で17.5点(95%信頼区間;CI;17.1-17.9),揺さぶりに関する知識については,視聴前後で6.8点(95%CI;6.3-7.2)と,有意に知識の増加が認められた。これらは,属性等に関してそれぞれ層別化しても,同様の結果であった。さらに,知識の増加分に対する共変量の回帰分析の結果,泣きに関する知識では,回答者が男性,第1子,うつ傾向ではない者が知識の増加がより顕著であった。揺さぶりに関する知識では男性,第1子,妊娠時の気持ちに「予想外だがうれしかった」と回答した者が知識の増加がより顕著であった。

結論 乳児の泣きおよび揺さぶりに関する教育的動画の妊娠期の視聴により,父親となる者を含むどの属性においても知識の向上が確認された。

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