日本公衆衛生雑誌
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妊娠期の母体喫煙と受動喫煙,生後の受動喫煙と子の喘息およびアトピー性皮膚炎罹患との関連:神戸市母子保健情報による疫学研究
吉田 都美三品 浩基竹内 正人川上 浩司
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論文ID: 20-142

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抄録

目的 喫煙曝露が子の喘息やアレルギー性疾患の罹患と関連することが知られているが,母体喫煙を含めた受動喫煙の影響については十分に検討されていない。本研究では,神戸市より提供を受けた母子保健情報を用いて,妊娠期の母体喫煙や生後の受動喫煙が子の喘息やアトピー性皮膚炎罹患に与える影響を検討した。

方法 2004年4月1日から2013年3月31日に神戸市の乳幼児健診対象となった児のうち,曝露とアウトカムに欠損のない53,505人を最終的な解析対象者とした。妊娠届出書より母親と同居家族の喫煙状況,4か月児健診の問診票より生後の受動喫煙状況を特定し,これらの情報をもとに児への喫煙曝露を排他的に8群に分類した。アウトカムは,喘息あるいはアトピー性皮膚炎の3歳までの罹患とし,3歳児健診の問診票より特定した。統計解析においては,妊娠期の母体喫煙,妊娠期の受動喫煙,生後の受動喫煙と3歳までの喘息,アトピー性皮膚炎罹患との関連について,一般化線形混合モデルによりオッズ比と95%信頼区間(confidence interval:CI)を推計した。なお,調整因子の欠損値は多重補完を行った。

結果 解析対象者となった53,505人のうち,男児27,210人(50.9%),女児26,218人(49.0%)であった。3歳までの喘息罹患者は5,810人(10.9%),アトピー性皮膚炎罹患者は4,964人(9.3%)であった。喘息罹患に関しては,喫煙曝露いずれもなし群に対して,妊娠期の母体喫煙のみある群のオッズ比が2.04(95%CI:1.38-3.01)で最も高かった。また妊娠期の母体喫煙がなく,受動喫煙のみがある場合は,オッズ比1.12(95%CI:1.01-1.25)であったが,妊娠期の母体喫煙がある場合は,オッズ比が1.86(95%CI:1.42-2.44)と上昇していた。一方で,アトピー性皮膚炎の罹患については,いずれの喫煙曝露も有意な関連は見られなかった。

結論 本検討より,妊娠期の喫煙や生後の受動喫煙は子の喘息罹患と関連することが確認された。妊娠中の女性の禁煙を推進するだけでなく,同居家族を含めた禁煙指導の推進が必要であると考えられた。

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