日本公衆衛生雑誌
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新型コロナウイルス感染症流行下における食支援利用者の実態と社会経済的状況変化との関連
黒谷 佳代大河原 一憲
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論文ID: 21-100

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抄録

目的 COVID-19が流行し,子どもの社会的包摂に向けた共助のしくみとして注目される子ども食堂の活動にも大きな影響があった。しかし,国内でCOVID-19流行下における子ども食堂を含む食支援利用実態について調査した研究は見当たらない。本研究ではCOVID-19流行下における食支援利用者の実態を把握し,社会経済的状況の変化との関連を検討することを目的とした。

方法 2021年2月にインターネット調査に協力した全国の20歳以上の成人33,004人(男性16,065人,女性16,939人)を解析対象とした。COVID-19流行下(2020年3月~2021年2月)に,安価もしくは無料で,その場で食事をする(子ども食堂等),特定の場所で食品の提供を受ける(フードパントリー等),食品を自宅に配送してもらう(子ども宅食等),いずれかの食支援を利用した者を食支援利用者,それ以外を未利用者と分類して分析した。また,COVID-19流行直前(2019年末~2020年2月)とCOVID-19流行下の雇用形態および世帯月収から,COVID-19流行下の社会経済的状況の変化を評価した。食支援利用状況と社会経済的状況の変化との関連は多重ロジスティック回帰分析により調整オッズ比および95%信頼区間を算出した。

結果 COVID-19流行下における食支援利用者は3,071人(9.3%),子ども食堂等利用者は1,549人(4.7%),フードパントリー等利用者は1,296人(3.9%),子ども宅食等利用者は2,236人(6.8%)であった(重複回答有)。COVID-19流行下の雇用形態不変の者に対する,変化した者における食支援利用の調整オッズ比は1.47(95%信頼区間1.28-1.70)であった。COVID-19流行下の世帯収入が不変の者に対する,減少した者,増加した者の食支援利用の調整オッズ比(95%信頼区間)は,それぞれ1.89(1.65-2.15),1.67(1.37-2.03)であった。COVID-19流行下の雇用形態も世帯収入も不変の者に比べ,いずれかが変化した者では食支援利用の調整オッズ比が統計学的有意に高かった。

結論 COVID-19流行下における食支援は約10人に1人が利用していた。食支援利用者は,COVID-19流行下に雇用形態や世帯収入に変化のあった人が多いことが示唆された。

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