日本公衆衛生雑誌
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要支援・要介護リスク評価尺度における追跡9年間の要支援・要介護認定リスクに対するカットオフ値の検討
松﨑 英章辻 大士陳 涛陳 三妹野藤 悠楢﨑 兼司
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論文ID: 23-111

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抄録

目的 本研究では,要支援・要介護リスク評価尺度(リスク評価尺度)における追跡9年間の要支援・要介護認定リスク(要介護化リスク)に対するカットオフ値を検討する。

方法 本研究は,福岡県で実施された篠栗元気もん調査のデータを用いた9年間の前向き追跡研究である。2011年のベースライン調査に参加した要支援・要介護認定を受けていない篠栗町在住の高齢者2,629人のうち,データが得られた2,254人を解析対象とした。要介護化リスクの評価には,追跡3年までの期間で予測妥当性と外的妥当性を有することが示されており,すでにいくつかの市町村で利用されているリスク評価尺度を用いた(0–48点)。アウトカムは要支援・要介護認定とした。リスク評価尺度のカットオフ値は,追跡9年間の要介護化リスクをアウトカムとしたログランク検定のχ2値が最大となる得点とした。リスク評価尺度の合計得点についてはC統計量,カットオフ値については感度および特異度で予測妥当性を検証した。また,Cox比例ハザードモデルで算出したHazard ratio(HR)と95% confidence interval(95%CI)を用いて,リスク評価尺度をカットオフ値でカテゴリ化した2群(低得点群/高得点群)間における追跡9年間の要介護化リスクを比較した。多変量モデルでは,同居家族の有無,教育年数,経済状況,習慣的飲酒,習慣的喫煙,複数疾患罹患を調整した。

結果 追跡8.75年の間に,647人(28.7%)が要支援・要介護認定を受けた。リスク評価尺度のカットオフ値は13/14点であった。リスク評価尺度の合計得点のC統計量は0.774であり,カットオフ値の感度と特異度はそれぞれ0.726と0.712であった。低得点群(0–13点)に対する高得点群(14点以上)の要介護化リスクのHR(95%CI)は有意に高く,5.50(4.62–6.54)であり,多変量モデルでは4.81(4.00–5.78)であった(P<.001)。

結論 本研究では,先行研究(3年)よりも長い期間(9年)で追跡調査を実施した結果から,要介護化リスクの長期評価にはリスク評価尺度のカットオフ値を13/14点に設定する方法が適することが示唆された。また,このカットオフ値の利用は,介護予防に取り組む必要性を早い時期から啓発するための一次予防の手段の一つとして有用である可能性が示された。

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