日本公衆衛生雑誌
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認知症初期集中支援チームの活用実態と活用促進の検討:支援チームの併設有と併設無の比較から
兒﨑 友美
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ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 24-014

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抄録

目的 認知症初期集中支援チーム(以下,支援チーム)による支援効果や課題など,支援チームを対象にした研究は多数見られるが,支援チームの活用者である地域包括支援センター(以下,包括センター)を対象にした研究は見られない。そこで,包括センターを対象に運営者と活用者の双方向から,支援チームの活用実態や活用課題を検証し,支援チームの活用促進に向けた検討を行う。

方法 全国の包括センター5,625か所から等間隔抽出法で抽出した2,000か所に質問紙郵送調査を実施した。調査期間は2022年11~12月である。調査内容は,基本属性(設置機関,支援チーム併設の有無)と支援チーム活用件数および活用実人数,支援チーム活用課題である。分析は,支援チームを併設する包括センター(以下,併設センター)を運営者,併設しない包括センター(以下,単独センター)を活用者とし,支援チームの併設有無別に分け行った。基本属性や支援チーム活用件数,活用実人数は単純集計を行った。活用課題の自由記述はテキストマイニングを用いた。

結果 773票(回収率38.8%)を回収し,有効回答数は754票(37.7%)であった。内訳は「単独センター」が441件(58.5%),「併設センター」が313件(41.5%)であった。支援チーム活用割合は,「単独センター」が79.4%,「併設センター」が86.6%であった。2021年度の支援チーム活用実人数は,併設有無にかかわらず「1~5人」が最も多かった。

支援チームの課題として,単独センターでは,支援対象者要件や活用ルールの【活用の仕組み】,チーム医のかかわりやチーム員の専門性の【支援機能】,協働支援関係や事業の周知の【活用体制】が挙がった。併設センターからは,支援対象者要件や運営ルールの【運営の仕組み】,チーム医のかかわりや医療との連携の【支援機能】,チーム員の役割認識や人材不足の【運営体制】が挙がった。

結論 包括センターの多くは,支援チームを頻繁に活用してはいない現状にあることが示唆された。支援チームの活用促進を図るには,第一に,支援チームの仕組みであるルールの簡素化や支援対象者要件の緩和など運営・活用者双方の立場で仕組みを見直すこと。第二に,認知症支援体制について運用者である市町村を中心に,認知症支援者全員で定期・継続的に協議することが必要である。

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