目的 本研究では,今後の子育て支援,児童虐待予防対策への示唆を得るために,ソーシャルサポートと孤独感から母親の社会的孤立を測定し,母親の社会的孤立と児童虐待リスクの関連を明らかにすることを目的とした。
方法 2023年8月~9月に,近畿地方のA市,B市,C市で行われる乳幼児健診(計12回)に来所した母親365人を対象として,無記名自記式質問紙を実施した。質問項目について,「Duke Social Support Index日本語版」,「日本語版UCLA孤独感尺度(第3版)」,「育児ストレスショートフォーム実用版」を使用した。児童虐待リスクは,先行研究を基に著者が作成した11項目の尺度を用いた。また,先行研究で検討された母親と子どもの基本属性を尋ねた。分析は,まず,児童虐待リスクを従属変数として,母親および子どもの基本属性,ソーシャルサポート,孤独感,育児ストレスを独立変数として,階層的重回帰分析を行った。次に,間接効果の可能性がある変数を含めて,構造方程式モデリング(SEM)により,母親の社会的孤立と児童虐待リスクの関連モデルを検証した。
結果 著者の研究機関に返送した91人(回収率24.9%)の調査票を分析対象とした。児童虐待リスクを従属変数とした階層的重回帰分析の結果,「子どもの特徴に関するストレス」の得点が高いほど,母親の児童虐待リスクが高かった。また,SEMにより,家族または友人からのソーシャルサポートが少ないほど,母親の孤独感が強くなり,同時に育児ストレスを抱え,児童虐待リスクが高かった。
結論 本研究により,母親の社会的孤立は高い育児ストレスや児童虐待リスクを招く恐れがあることを明らかにした。今後,母親へのソーシャルサポートの充実,母親の孤独感の解消,児童虐待に関する専門性の高い介入プログラムが求められると考える。