日本公衆衛生雑誌
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ニュータウンにおけるグリーンスローモビリティの試行導入:7週間の実証試験
渡邉 良太斉藤 雅茂宮國 康弘辻 大士
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論文ID: 24-019

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抄録

目的 国土交通省は,時速20 km未満で公道を走ることができるグリーンスローモビリティ(以下,グリスロ)の導入を推進している。グリスロは移動支援のみならず,介護予防効果も期待される。本報告ではグリスロ導入時の課題と改善点を示すため,以下4つの観点から報告する。第1に,グリスロの運行実績を報告する,第2にグリスロ利用群の属性を非利用群と比較する,第3にグリスロの利用目的・意向を報告する,第4にグリスロが高齢者の介護予防に寄与するのか観察する。

方法 大阪府池田市にて2022年10~12月の7週間でグリスロの実証試験を行った。運行方法は定時・定ルートで該当地区の3ルートを1日6便,ボランティア運転手10人で行った。乗車方法は,車両が走っている際に手を挙げることで乗車可能とした。運行ルートおよび時間,乗車方法は当該地区へチラシで案内した。実証試験前後に自記式郵送調査を行い,実証後アンケート回答者674人および2時点ともに回答を得た502人より運行の課題,利用群の特徴,介護予防について観察した。介護予防の観察にはグリスロ利用有無別に「外出機会」,「個人・行動」,「社会関係」,「心理的側面」の15要因からグリスロをきっかけに良好な変化を示した者の割合を調査した。また,事後調査の健康指標が非利用群に対し,利用群で良好であるか検討した。

活動結果 全223便の運行のうち,214便(96.0%)で運行が可能であった。運転ボランティア10人の運行回数は平均3.1±2.4回/週(最小0回,最大11回)で一部特定の人に運転が集中していた。グリスロ利用群は65人(9.6%)で非利用群と比較し,地域組織参加割合や情緒的サポートの授受割合が高かった。グリスロの利用目的は買い物,通院の順に多く,利用群の約7割は外出が楽になると感じていた。グリスロ利用群のグリスロをきっかけとした各指標の良好な変化は3.1~26.2%で非利用群の0.2%~1.5%よりも高かった。さらに,事後調査において手段的自立で非利用群と比較し,利用群で自立者が多かった。

結論 グリスロの活用は買い物や外出支援だけでなく,介護予防に寄与する可能性がある。他方で一部の運転ボランティアに負担が集中しないような体制が必要である。また,グリスロ利用群には社会的交流が活発な方が多く,そうでない方に利用を促すには周知方法等の課題が示された。

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