日本公衆衛生雑誌
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生活保護受給者への架電による健診の受診勧奨と受診行動との関連:豊中市の2年間の取り組み
西岡 大輔 武本 翔子
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論文ID: 24-037

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抄録

目的 生活保護受給者(被保護者)の健康状態が好ましくないこと,健診受診割合が低調なことなどを背景に,2021年から被保護者健康管理支援事業が必須事業となり,重点項目に健診受診勧奨が位置付けられたが,被保護者の健診受診を促す方法に関する検討は乏しい。本研究では,豊中市の取り組みから架電による勧奨が被保護者の健診受診に与える影響を検討し,国内で参照できる資料を作成することを目的とした。

方法 2021,2022年度10月時点で40歳以上60歳未満の被保護者を対象とした。2021年度には対象者すべてに同時期に架電した。2022年度には生活保護世帯番号の偶奇により時期をずらして架電した。対象者には福祉事務所の医療担当者が架電した。2021年度には勧奨できた群(勧奨群)と,不在・不通等で勧奨できなかった群(非勧奨群)に分類し受診割合の違いを被保護者の属性ごとに検証した。2022年度には奇数群,偶数群に分類し,架電による効果を検証した。

結果 2021年度には,対象者403人のうち32人(7.9%),うち勧奨群では255人中26人(10.2%),非勧奨群では148人中6人(4.1%)が受診した。50歳代(勧奨13.3% vs 非勧奨3.1%; P=0.006),就労収入なし(勧奨13.9% vs 非勧奨3.6%; P=0.014),過去の健診未受診(勧奨9.1% vs 非勧奨1.5%; P=0.003),定期受診先なし(勧奨8.3% vs 非勧奨0%; P=0.012)で,勧奨群の受診割合が高かった。2022年度には奇数群に247人,偶数群に225人が割り付けられ,群間の特徴に差はなかった。介入期間中に奇数群では247人中4人(1.6%),偶数群では219人中10人(4.6%)が受診し,非介入期間中に奇数群では5人(2.1%),偶数群では6人(2.7%)が受診した。年度末ほど受診割合が高かった。架電による健診受診への条件付きオッズ比は1.35(95%信頼区間0.59–2.93, P=0.503)と推定された。

結論 被保護者への架電による健診受診勧奨は十分な効果が得られなかったが,「50歳代」「就労収入なし」「過去の健診未受診」「定期受診先なし」などの属性を持つ被保護者にターゲットを絞り,確実に架電できる方法で,年度末など期限が近い時期に実施することが効果的な可能性があった。

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