日本公衆衛生雑誌
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地域高齢者における主観的な嚥下機能と口腔関連QOLに関する研究
石上 真麗重田 茉穂近藤 実南福谷 遥西村 瑠美鈴鴨 よしみ内藤 真理子
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論文ID: 24-082

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抄録

目的 嚥下機能と口腔の健康にかかわるQOL(口腔関連QOL)は全身の健康を維持するために重要な要素と考えられるが,地域高齢者について両者の関係を明らかにしている研究は少ない。本研究では,地域高齢者における主観的な嚥下機能と口腔関連QOLについて横断的に検討した。

方法 全国47都道府県に居住する男女を対象に,2022年1月に郵送によるアンケート調査を実施した。65歳以上の男女のうちデータ欠損がない552人を本研究の対象とした(回収率93.7%)。基本属性(性別,年齢),口腔関連QOL,嚥下機能,現在歯数,糖尿病の既往歴について,自記式調査票で情報を収集した。口腔関連QOLについてはGeneral Oral Health Assessment Index(GOHAI)の日本語版を用いて評価した。Dysphagia Risk Assessment for Community-dwelling Eld­erly(DRACE)を用いて嚥下機能を評価し,DRACEスコア4以上を嚥下機能低下ありとした。

GOHAIスコアの国民標準値(52.5)をカットオフ値とし,各因子を2群で比較した。性別,年齢,現在歯数を調整したロジスティック回帰分析により,嚥下機能低下とGOHAIスコアが国民標準値未満になるリスクの関連を検討した。さらに,性別,年齢(75歳カットオフ値),現在歯数(20本カットオフ値),糖尿病既往の有無による層別分析を実施した。

結果 研究対象者の平均年齢は74.9±6.2歳だった。GOHAI国民標準値未満の者は全体の47%を占めていた。DRACEスコアが4以上の者は39%を占めた。GOHAIスコアが国民標準値以上の群は未満の群に比べて,DRACEスコアが有意に低かった。

嚥下機能低下なし群に対する,嚥下機能低下あり群のGOHAIスコアが国民標準値未満となる調整済オッズ比は4.9(95%CI:3.1–7.5)であった。層別分析において,女性,75歳以上,現在歯数20本以上,糖尿病既往あり群は,各々そうでない群に比べて,より高いオッズ比が認められた。

結論 本研究結果より,口腔関連QOLと主観的な嚥下機能との間に有意な正の関連が認められた。女性,75歳以上,現在歯数20本以上や糖尿病既往を有することが両者の関連を強めている可能性が示された。

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