論文ID: 24-120
目的 健康日本21(第三次)で掲げられた自然に健康になれる環境づくりには,産官学民などの立場の異なる複数の組織が社会的課題の解決を目指すコレクティブ・インパクトが活用できる可能性がある。しかし,国内で大学などの研究機関がコレクティブ・インパクトを主導する主幹チームに加わっている事例は少ない。本報告では,千葉大学と岩渕薬品で設立した健康まちづくり共同研究部門の千葉県四街道市における健康まちづくりの初年度(2023年度)の活動内容を記述し,その成果と課題,今後の展望を論じることを目的とした。
方法 本報告では,共同研究部門における四街道市における初年度(2023年度)の取組を記述した。そのうえで,その成果と課題,今後の展望を成功するコレクティブ・インパクトの5要素(活動を支える組織,継続的なコミュニケーション,相互活動強化,共通アジェンダ,評価システム共有)に沿って整理した。
活動内容 2023年4月に共同研究部門を立ち上げ,設立記念シンポジウム,全15回の健康まちづくり講座を実施し,複数の企業,四街道市,住民,地域組織との連携を図った。2023年度の取組を通じ,多様な主体が,皆で協働することを大事にし,①皆でつくるコミュニティ,②皆でつくる居場所,③皆で支える力,④皆が健康なまちの実現という4つのコンセプトを掲げた四つ葉プロジェクトを立ち上げた。
結論 2023年度の活動により,活動を支える組織として,千葉大学,岩渕薬品を主幹チームとした運営体制を確立した。継続的なコミュニケーションにより,四街道市を含む複数の関係者間のネットワークを構築し,相互活動強化にあたるような関係者間の連携事例も生まれた。一方で,課題としては,四街道市,多くの関係者を含む運営のあり方,四つ葉プロジェクトのコンセプトの普及といった共通アジェンダ,評価デザインの共有などが挙げられる。四街道市での取組により,全年代の健康・Well-beingなまちづくりを進め,「健康日本21(第三次)」のビジョンの実現や他自治体にも応用可能なモデルづくりに貢献したい。