論文ID: 24-139
目的 グリーンスローモビリティ(以下,電動カート)は利用者の外出や社会的行動を促進し,要支援・要介護リスクの低減が期待されている。電動カートの運行が停止した場合,利用者の外出や社会的なつながりが減少し,要支援・要介護リスクが高まると予想される。そこで,本研究では電動カートの運行停止により利用者の要支援・要介護リスクが高くなるのかを検証した。
方法 本研究は電動カート運行前,運行中・停止直後,運行停止4か月後の3時点の縦断研究である。運行前,運行中・停止直後調査では,実証実験に伴う自記式郵送調査票を送付した。その後,実証事業の終了により電動カートが4か月間運行停止し,河内長野市が実施した運行停止調査データを二次利用した。対象は河内長野市に居住し,3回の調査に回答した65歳以上の高齢者のうち,運行中・停止直後調査で電動カートを月1回以上利用していた78人である。目的変数は3年以内の要支援・要介護認定の発生を予測する要支援・要介護リスク評価尺度点数(以下,リスク点数,高得点ほど高リスク)である。説明変数は3時点の調査時期(運行前,運行中・停止直後,運行停止)とした。調整変数は運行前の性,教育歴,婚姻状況,就労状況,独居,経済的困窮感である。線形混合効果モデルで非標準化係数B,95%信頼区間,P値を算出した。追加分析では電動カートの利用頻度が高いほど運行停止の影響を受ける可能性を考慮し,利用頻度別(週1回以上,月1~3回)で層別に分析した。
結果 運行前,運行中・停止直後,運行停止調査のリスク点数の平均点は,電動カート利用頻度が週1回以上の者(n=31,39.7%)は運行中・停止直後で最も低く(20.0点),運行停止で最も高いV字型であった(21.8点)。運行中・停止直後を基準とした調査時期のB(95%信頼区間,P値)は,運行前で0.01(-0.78–0.81,P=0.975),運行停止で0.49(-0.31–1.28,P=0.231)だった。週1回以上の者では運行前で0.71(-0.75–2.17,P=0.341),運行停止で1.77(0.31–3.24,P=0.017),月1~3回の者では有意な関連はなかった。
結論 電動カートの運行停止により週1回以上の利用者の要介護リスクが高くなっていた。電動カートの持続的な運行は高齢者の介護予防に重要な手段となり得る。