抄録
2013年10月の豪雨によって東京都伊豆大島の元町地区では大規模な表層崩壊によって多量の流木を伴う土石流が発生して市街地に多くの被害を与えた。今回の災害で多量の流木が発生した背景を明らかにするため、過去の空中写真を用いて写真測量を行い、過去と現在の植生高を比較した結果、1976年から2013年の間に元町地区上方の斜面では多くの場所で樹高が3 ~ 6m も増加し、2倍程度になったことが明らかになった。伊豆大島の森林は薪炭生産等のために古くから強い利用圧を受けてきたことが知られている。写真測量から明らかになった樹高の増大は主として樹木の成長に
よるものであり、とくに広葉樹林については1960年代以降に進行した燃料革命による薪炭生産の終結が大きく影響していると推定される。