日本公衆衛生雑誌
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COVID-19対応を経た行政保健師の離職意図:10年前との比較(公衆衛生看護のあり方に関する委員会2022/2023調査報告)
井口 理 田口 敦子佐藤 太地岩本 萌奥田 博子望月 宗一郎嶋津 多恵子曽根 智史前田 香室岡 真樹持田 恵理大森 純子
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論文ID: 25-064

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抄録

目的 COVID-19への対応を経て保健師の離職意図が10年前と比較してどのように変化したか,傾向スコアマッチング法を用いて明らかにすることを目的とした。

方法 公衆衛生看護のあり方に関する委員会2022/2023の活動の一環として,離職意図に至る理論モデルJob Demands-Resources Modelに基づき,保健師を対象とした反復横断調査を行った。COVID-19発生前後の2時点の横断観察データを用いた。発生前データは2013年実施の調査(以下,10年前調査),発生後データは2022年12月~2023年2月に実施した調査(以下,今回調査)である。今回調査は,10年前調査に準じて自記式質問紙を構成し,全国の行政組織の設置主体別就業者割合と同程度になるように常勤保健師4,000人を層化抽出して配布した。性別,保健師としての勤務年数,所属自治体の行政区分等,11の共変量を傾向スコアで調整した上で分析対象データを抽出した。離職意図をχ2検定,離職意図に至る媒介変数であるバーンアウトとワーク・エンゲイジメントはt検定を用いて比較した。

調査結果 今回調査の有効回答2,127件(有効回答率53.2%)と10年前調査の1,798件を傾向スコアでマッチングし,各群1,246件,計2,492件を分析対象とした。今回調査の回答者は,10年前調査に比べて係員あるいは主任の者,保健部門に所属する者,都道府県に所属する者,所属組織の管轄人口30万人以上である者が多かった。しかし,傾向スコアマッチングによる調整後,すべての調整変数の標準化差が0.1未満となり,2群間で分布や構成比が均質化されたことが確認された。10年前調査と比較して,今回調査の方が離職意図を有する保健師は有意に多かった。また10年前よりも保健師がバーンアウトし,ワーク・エンゲイジメントが低下していることが明らかになった。

結論 COVID-19への対応が保健師を疲弊させ,離職意図を増大させた可能性が示唆された。保健師のキャリア継続のために,バーンアウトとワーク・エンゲイジメントの影響要因となる仕事の要求と資源に関する更なる分析が必要である。

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