抄録
本研究のテーマは官僚制組織内の知識移転であり,電力会社内においてヒューマンファクターの考え方を,研修で受講者を通じて社内に展開する事例を題材としている.その目的は仲介人となる受講者が伝達された情報に対して賛同する要因の解明であり,特に送り手,仲介人,仲介人の上司,受け手の4者との関係性の視点から明らかにすることである.2014 年 2 月から 2015 年 3 月までに開催された計 5 回の研修において, 受講者全 98 名を対象にアンケートを実施した(有効回答率約 98%).分析の結果,仲介人が知覚した,送り手自らの伝達する情報に対する賛同度合いが大きいほど,仲介人は伝達情報に賛同していることがわかった.本結果に基づき,官僚制組織内の知識移転をより円滑にするための,情報伝達の3つの心得と1つの具体策を提案する.