抄録
本研究は,技術職場における安全情報の活用に至る,組織成員の認知的なプロセスを検討することが目的である.この目的達成のため,レジリエンスについて社内研修で教育される事例を題材とした.研修を受講した組織成員74 名分のアンケートデータを利用し,組織成員の情報活用を最終的な従属変数として共分散構造分析を行う.分析の結果,研修講師の情報への思い入れの説明,情報に対する個人的な体験談,情報伝達時の活気良さが,研修講師の熱心な情報伝達という潜在変数を介し,研修講師の情報賛同,組織成員の情報信用を経て,最終的に組織成員の情報活用に至るという全てのパスが,統計的に有意であった.この結果は,技術職場において組織成員に安全情報が能動的に活用されるためには,その安全情報が語り手自身の信念になっていて,対面で熱心に語ることで,組織成員に語り手の強い賛同を認知させることの必要性を示唆する.