Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
一般論文
A重油を硫酸と混合処理した不正軽油の識別分析
倉田 正治相澤 直之平野 治夫高島 千尋永井 正敏
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 47 巻 1 号 p. 44-53

詳細
抄録

A重油を硫酸と混合して密造された不正軽油の簡易識別分析法の開発のため,A重油と硫酸で調製した油を分光蛍光光度法およびガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)で検討した。分光蛍光光度法による蛍光物質の分析の結果,A重油は硫酸処理されると蛍光極大ピークの励起波長も蛍光波長もいずれもブルーシフトして軽油と類似した蛍光極大ピークが得られた。しかしながら,3次元蛍光スペクトル,励起スペクトルおよび蛍光スペクトルの各帯形の比較により,軽油との識別が可能であった。GCMSによる油中の芳香族化合物成分を分析した結果,硫酸との混合時間が長くなるにつれて,A重油中の芳香族化合物成分は徐々に減少し飽和炭化水素成分の豊富な変性油(不正軽油)になる。この際,硫酸処理によりA重油中から除去される芳香族化合物成分のうちナフタレン,フェナントレン等の縮合多環芳香族化合物成分に比べてアルキルベンゼン,ビフェニル等の縮合多環を持たない芳香族化合物成分は除去されにくいことが判明した。そして混合処理時間3分程度(A重油と95% 硫酸を1 : 1の体積比で混合調製した場合)でA重油が軽油と類似した変性油になっても,1,2,4-トリメチルベンゼン/ペンタデカンの分子イオンピーク強度比の比較から変性油と軽油と識別可能であった。したがって,本法はA重油を硫酸処理して調製した不正軽油の簡易識別分析法として有効と考えられる。

著者関連情報
© 2004 公益社団法人石油学会
前の記事 次の記事
feedback
Top