2009 年 52 巻 3 号 p. 128-138
イソブテン,硫化水素および硫黄からのジ-t-ブチルポリスルフィドの合成反応を,骨格にAl,Ga,またはBを含むMFI型ゼオライトの固体酸触媒上で行い,それらの性能を液体アミン触媒であるジシクロヘキシルアミンと比較した。触媒は,MFI型ゼオライトにベーマイトバインダーを加えて成型して焼成し,プロトン化処理をして調製した。得られた生成物を,元素分析,蛍光X線分析計,HPLC,GPC,1H-NMRを用いて分析した。骨格にAlまたはGaを含む触媒は高活性で,特にGaを含む触媒では液体アミン触媒と同等以上のポリスルフィド収量が得られた。生成ポリスルフィドは硫黄架橋数1~9,平均架橋数4.2~4.7で,液体アミン触媒の場合とほぼ同等であった。これらの結果を基に反応経路を推定した。一方,Bを含む触媒では,主としてオクテン,チオール,およびモノスルフィドが生成するが硫黄は未反応で残り,ポリスルフィドはごくわずかしか生成せず,原料硫黄は未反応で残った。触媒のアンモニア昇温脱離の結果から,このポリスルフィド合成反応には,AlまたはGaを含む触媒が持つ強い酸点が有効で,強い酸点を持たないBを含む触媒は単体硫黄の開環を促進できずポリスルフィドが生成しないものと推論した。