2013 年 56 巻 4 号 p. 214-220
著者らは,形状やサイズを厳密に制御した白金ナノ結晶(Pt NCs)を簡便に合成する多様な液相還元反応法を開発してきた。さらに,調製したPt NCsをモデル触媒に用い,触媒の活性点に関する知見を得た。本稿はこうした著者らの研究成果を中心に概説する。すなわち,Ptイオンを還元してPt NCsを調製する際,溶剤の極性や添加剤などの反応環境に工夫を凝らすことで,試薬の溶解性,反応性,相互作用状態などを厳密に制御し,前駆体Pt(0)核の形成やその成長過程を高度にコントロールできることを明らかにした。厳密に制御した反応方法によって,Pt cubeや単結晶Pt nanowireを簡便に調製することができ,さらにPt cubeの微小化や頂部へ位置選択的なAgの複合化も達成した。調製した形状が異なる数種のPt NCsをモデル触媒として用いてオレフィンの液相水素化反応を行い,Pt(100)面がPt(111)面よりも高い活性を示すことを明らかにした。さらに,サイズが異なるPt cubeを触媒に用いたオレフィン液相水素化反応より,活性点に関する知見も得た。本稿で紹介した成果は,高性能触媒の設計指針の導出につながるものと期待される。