Journal of the Japan Petroleum Institute
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序文 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」特集号に寄せて
和田 雄二
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2018 年 61 巻 2 号 p. 87

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抄録

マイクロ波を用いた化学,すなわち「マイクロ波化学」そして,このマイクロ波化学を利用した材料創製研究は,過去数十年間,科学者,技術者の興味を引き付けてきました。マイクロ波化学の応用技術としては,内部からの発熱を利用する熱伝導性に制約を受けない特殊な加熱法としての特長を利用したゴム加硫プロセス,陶磁器製造過程における乾燥,食品乾燥などへの利用にまだ範囲が限定されていました。しかし,近年,化学合成,材料製造における化学反応の促進,短時間化,低温化,省エネルギーなどの反応制御技術として興味が集まり,再び熱い注目を浴びています。最近,高度炭素 · 水素循環をキーワードとして,再生可能エネルギーにより化学物質の循環的利用を可能にする研究開発の重要性が叫ばれています。ボトルネックとなる熱的平衡制約を打ち破る技術として,速度論的支配や非平衡状態の制御によって高い不可逆性や選択性を実現する化学 · 分離技術の開発の重要性が指摘されています。マイクロ波は,この課題を解決できる優れた潜在力を持った技術です。

本企画は,有機化学,無機化学,触媒化学,材料科学,バイオマスそれぞれの分野の先端研究を俯瞰する総合論文,そして,それぞれの分野の原著論文も組み合わせて,特集号として構成しました。永らく議論の対象とされてきた「マイクロ波特殊効果」について記述する論文も適切な執筆者を選んで,本特集号への執筆へ招待いたしました。執筆者選択の母体は,提案者が委員長を務めている日本学術振興会産学協力研究委員会電磁波励起反応場第188委員会です。そこに所属するアカデミア委員ならびに企業委員から,適切な執筆者を選び,招待執筆者としてお願いいたしました。今回の特集号の刊行を通し,石油学会会員の皆様,そして多くの研究開発者の皆様にマイクロ波技術の現状をご理解いただき,マイクロ波技術への興味を深めていただければ幸いです。最後に,本特集号の立案から編集すべての過程で多大なお世話をいただいた石油学会論文誌編集委員会の皆様に感謝の意を表します。

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© 2018 公益社団法人石油学会
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