Journal of the Japan Petroleum Institute
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61 巻, 2 号
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一般論文
  • 石原 篤, 前嶋 悠佑, 磯部 真一, 那須 弘行, 橋本 忠範
    原稿種別: 一般論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    新規炭素–酸化物複合体担持コバルト触媒を炭素材としてポリエチレングリコール(PEG)を用いて調製し,一酸化炭素の水素化を,この触媒の評価のために0.5 MPaの低圧下,溶媒存在下の条件で行った。一酸化炭素の転化率は16Co63C21TiO2=16Co63C21Al2O3 < 16Co63C21SiO2 < 16Co63C21ZrO2(16Co: 16 wt% Co; 63C: PEG中の炭素 63 wt%; 21TiO2, Al2O3, SiO2あるいはZrO2 : 21 wt% TiO2, Al2O3, SiO2あるいはZrO2)の順に増加した。コバルト触媒で通常使われない高温低圧下で生成物はメタンであったが,16Co63C21ZrO2触媒は失活せず,340 ℃で31 %の転化率を示した。16Co63C21ZrO2はメソ細孔からなり,物質の拡散に有利であったと考えられる。また,コバルト金属種が反応後も安定に保たれていることがXRDにより確かめられた。新規炭素–酸化物複合体担持鉄触媒を同様の方法で調製し,溶媒存在下同様の条件で一酸化炭素の水素化を検討した。一酸化炭素の転化率は16Fe63C21SiO2=16Co63C21TiO2 < 16Fe63C21Al2O3 < 16Fe63C21ZrO2(500 ℃で焼成) < 16Fe63C21ZrO2(700 ℃で焼成)の順に増加した。主生成物は高温低圧下でメタンであったが,700 ℃で焼成した16Fe63C21ZrO2はC2~C6炭化水素も生成した。ZrO2担持触媒の表面積と細孔容積が焼成温度の上昇に伴い増加した一方で,鉄粒子が反応後42 nmから7.2 nmへ減少していることが高活性と関係していると考えられる。

  • 中野 知佑, 高田 雄太, 千田 勇太郎, 加藤 純雄, 小笠原 正剛, 池内 孝夫, 進藤 隆世志
    原稿種別: 一般論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 59-71
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    化学解乳化剤を用いない原油中水型エマルジョン(原油系W/Oエマルジョン)の効率的な解乳化(油水分離)を検討するため,ポリアクリル酸–ポリアクリル酸ナトリウム共重合体を吸水性ポリマー(WAP)として用いた原油系W/Oエマルジョンからの水分離を回分式,流通式の両方式で試行した。WAPには2種類の市販品(粒状,繊維状)を使用した。その結果,いずれのWAPを用いたときにも原油系W/Oエマルジョンからの水分離は回分式,流通式を問わず可能であり,重力沈降による水の沈降分離よりも迅速であること,有機溶媒の乾燥に用いられるゼオライトと比較して早期の水分離が可能であることが示唆された。また,WAPを用いた水分離を高温下(50~70 ℃)および/または高圧下(1.0~1.5 MPa)において行ったとき,水分離効率は向上すること,流通式を用いることで連続的な水分離は可能であることが示唆された。さらに,実験後のWAPは,トルエンで洗浄したのちに乾燥させることで再使用(再生)可能であることも示され,原油系W/Oエマルジョンの重力沈降,遠心分離,熱処理以外の物理的解乳化(油水分離)において,WAPの使用は有効であることが示唆された。

  • 室山 広樹, 奥田 翔大, 松井 敏明, 橋上 聖, 川野 光伸, 稲垣 亨, 江口 浩一
    原稿種別: 一般論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 72-79
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    現在,水素は主に炭化水素の改質反応から製造されている。水素製造時に生成ガス成分の変化や触媒の劣化状況をモニタリングすることは重要である。本研究では,Ni/Al2O3触媒を用いたメタンのCO2改質および部分酸化反応の進行過程を解析した。触媒層内に酸素センサを挿入することにより,層内の複数の測定点において酸素分圧を求め,得られた値からメタン転化率や各ガス種の濃度を算出した。両改質反応において,酸素センサを用いた測定手法により得られたメタン転化率はガスクロマトグラフによる分析結果とよく一致し,本方法でメタン改質反応を正確に分析できることが確認された。定常運転時の転化率の経時変化より,触媒劣化の程度が層内の位置によって異なることが明らかとなった。また,部分酸化反応については,触媒層内のガス種と温度の分布から想定され得る反応機構を提案した。

  • 多田 昌平, 柳田 晃秀, 霜田 直宏, 本間 徹生, 高橋 誠, 成行 あかね, 里川 重夫
    原稿種別: 一般論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    CO選択メタン化反応のためのNi/TiO2触媒の加速劣化試験を行い,この触媒の劣化要因を検討した。触媒の加速劣化処理は,反応ガス雰囲気下,通常の使用温度およびそれより高い温度(200,250,300 ℃)で24時間行った。加速劣化試験後に,COメタン化反応の選択性が低下した。これは,副反応である逆シフト反応を抑制できなくなったことに起因する。粉末X線回折測定から,Ni/TiO2触媒中のTiO2の構造は反応試験前後で変化しないことが明らかとなった。X線吸収分光法から,Ni/TiO2触媒中のNi種が水素によって還元され,金属Niになることが確認された。また,その後に続けて加速劣化試験を行っても,このNi種は金属Niとして存在し,変化しないことが分かった。特筆したい点は,加速劣化試験後のNi/TiO2触媒表面に存在するCl種の数が加速劣化試験前のものに比べ大幅に少なくなったことである。したがって,CO選択メタン化反応中にNi/TiO2触媒表面に存在するCl種が消失することが明らかとなり,このことがNi/TiO2触媒の劣化要因であると示唆される。

序文 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
  • 和田 雄二
    原稿種別: 序文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 87
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    マイクロ波を用いた化学,すなわち「マイクロ波化学」そして,このマイクロ波化学を利用した材料創製研究は,過去数十年間,科学者,技術者の興味を引き付けてきました。マイクロ波化学の応用技術としては,内部からの発熱を利用する熱伝導性に制約を受けない特殊な加熱法としての特長を利用したゴム加硫プロセス,陶磁器製造過程における乾燥,食品乾燥などへの利用にまだ範囲が限定されていました。しかし,近年,化学合成,材料製造における化学反応の促進,短時間化,低温化,省エネルギーなどの反応制御技術として興味が集まり,再び熱い注目を浴びています。最近,高度炭素 · 水素循環をキーワードとして,再生可能エネルギーにより化学物質の循環的利用を可能にする研究開発の重要性が叫ばれています。ボトルネックとなる熱的平衡制約を打ち破る技術として,速度論的支配や非平衡状態の制御によって高い不可逆性や選択性を実現する化学 · 分離技術の開発の重要性が指摘されています。マイクロ波は,この課題を解決できる優れた潜在力を持った技術です。

    本企画は,有機化学,無機化学,触媒化学,材料科学,バイオマスそれぞれの分野の先端研究を俯瞰する総合論文,そして,それぞれの分野の原著論文も組み合わせて,特集号として構成しました。永らく議論の対象とされてきた「マイクロ波特殊効果」について記述する論文も適切な執筆者を選んで,本特集号への執筆へ招待いたしました。執筆者選択の母体は,提案者が委員長を務めている日本学術振興会産学協力研究委員会電磁波励起反応場第188委員会です。そこに所属するアカデミア委員ならびに企業委員から,適切な執筆者を選び,招待執筆者としてお願いいたしました。今回の特集号の刊行を通し,石油学会会員の皆様,そして多くの研究開発者の皆様にマイクロ波技術の現状をご理解いただき,マイクロ波技術への興味を深めていただければ幸いです。最後に,本特集号の立案から編集すべての過程で多大なお世話をいただいた石油学会論文誌編集委員会の皆様に感謝の意を表します。

総合論文 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
  • 福島 潤, 滝澤 博胤
    原稿種別: 総合論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    炭素熱還元法という簡便な方法により望ましい粒径,形態を有するナノ粒子を得るために,マイクロ波プロセスを用いた。マイクロ波プロセスにより,原料の形態を維持したTi4O7ナノ粒子(〜60 nm)を,950 ℃,30分の熱処理によって得た。通常加熱では粒成長が見られたため,高温領域での炭素熱還元反応においても,マイクロ波プロセスの特徴である急速加熱(250 ℃/min〜)および急速冷却が粒径の維持に効果的であったと考えられる。また,マイクロ波プロセスにより,高い窒化率を有する原料形態を維持した球状AlNナノ粒子の合成に成功した。遷移アルミナ(AlON中間体の形成のために有利な結晶構造であるが,1200 ℃以上でα-Al2O3に相変化する)の結晶構造がマイクロ波急速昇温によって1300 ℃以上においても維持されたためであると考えられる。これに加えて,窒素流量を最適化することによって,0.88の窒化率を有する球状AlNナノ粒子を,1200 ℃,180分,窒素流量0.2 L/minの条件で得ることができた。

  • 和田 雄二, 椿 俊太郎, 米谷 真人, 藤井 知, 岸本 史直, 羽石 直人
    原稿種別: 総合論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    マイクロ波照射下での化学反応系においてのみ観測される「マイクロ波特殊効果」の起源として,マイクロ波照射下で誘導される固体材料界面で生じる二つの現象を提案する。著者らは,第1の現象としてマイクロ波照射下での固体と接触面間の接触点で観察される発熱現象に着目しており,これらを「非平衡局所加熱」と呼んでいる。マイクロ波照射下でのin-situラマン分光測定によって,DMSO中に分散したコバルト金属粒子に非平衡局所加熱が生じることを実証した。また,ゼオライト粒子のコアに炭素を配置することによって非平衡局所加熱を生じ,ゼオライトの細孔内でのアルコール脱水反応の促進が可能であることを示した。第2の現象は,マイクロ波照射下での固体界面において生じる「電子移動の加速効果」であり,硫化カドミウム誘導体の光還元反応やヘマタイト電極の表面での水の酸化反応において実証した。

  • 福島 英沖
    原稿種別: 総合論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    当研究所で開発したシングルモード方式のキャビティと新規なマイクロ波吸収材を用いることで,100 ℃/sという極めて高速な加熱方法を見出した。この技術を用いてエタノールの水蒸気改質を行い,マイクロ波改質法の優位性について検証した。その結果,マイクロ波照射下では触媒層のみが選択的に加熱され,従来法よりも低温で触媒を活性化できることが分かった。改質温度500 ℃で転化率100 %,水素濃度70 %,エタノール1モルから最大4.8モルの水素が得られた。また,エタノール量を増やしても改質性能を維持でき,実用レベルに近いガス空間速度SV=130,000 h−1が得られた。特にマイクロ波を用いると,低温域で平衡濃度計算値よりも著しく高い水素濃度が得られ,従来のプロセスではあり得ない低温改質が実現でき,熱的非平衡状態の存在が示唆された。さらに,マイクロ波照射下では活性化エネルギーが低下し,反応が促進することにより,従来法よりも低温 · 短時間で改質が行われたと推察された。マイクロ波を利用した水素製造法は,始動性や負荷応答性に優れ,低温改質,高効率,小型軽量化など,従来にない多くの優れた特徴を持ち,将来の新しい改質技術として燃料電池等への応用が期待できる。

  • 三谷 友彦
    原稿種別: 総合論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    バイオエネルギー生産を目指したバイオマスマイクロ波処理の最近の動向について解説する。最近の原著論文の統計的解析に続いて,バイオマスマイクロ波処理手法の分類を説明する。マイクロ波は,前処理,ガス化,熱分解,エステル交換,抽出,液化,乾燥などの様々な処理で重要な役割を果たしており,処理エネルギーの低減,反応時間の高速化,生産量の改善の観点でマイクロ波は大いに期待されている。本論文では第2世代バイオマス(リグノセルロース系バイオマス)および第3世代バイオマス(藻類,海藻)のマイクロ波処理を中心に取り上げる。また,マイクロ波処理の大型化の問題や,マイクロ波処理のエネルギー消費,コスト,および効率の議論についても,具体的な開発事例を挙げて説明する。バイオマス混合物の誘電特性を知ることは,効果的なマイクロ波処理容器を設計する上では極めて重要である。マイクロ波処理の工業化は未だ道半ばではあるが,再生可能エネルギー生産に対する将来の処理方法としてマイクロ波は今後も期待される手法であろう。

  • 澤田 太一, 山田 徹
    原稿種別: 総合論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    反応時間の短縮 · 副反応の抑制 · 収率の改善などを目的としたマイクロ波の有機合成反応への利用が今日活発になされている。マイクロ波による加熱は反応系内部から迅速に起きるため,一般にこれらの利点は熱的効果によるとされる。一方で,単純な熱的効果のみでは説明が困難な現象も報告されている。最近我々の研究グループは,いくつかの不斉合成反応がマイクロ波照射によってエナンチオ選択性を保持したまま加速されることを報告した。これらの結果は単純な熱的効果では説明することができず,マイクロ波特異効果(非熱的効果)の寄与が実験的に明らかとなった。ここでは我々のマイクロ波特異効果に関する最近の研究成果,すなわちビアリールラクトン類の不斉開環反応,光学的に純粋なビアリールラクトン類のラセミ化反応,不斉Claisen転位反応,不斉Conia-ene反応,閉環メタセシス反応における検証結果を紹介する。

  • 吉川 昇
    原稿種別: 総合論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    マイクロ波加熱は電子レンジとして食品の加熱や調理の目的から広く使用されている。また,有機化学の工業分野においては,反応励起などへの応用も研究が盛んである。これまで著者らが研究を行って来た金属 · 無機材料プロセッシングにおいては,食品や有機化学分野における加熱温度に対し,はるかに高い温度におけるマイクロ波加熱過程を利用するものである。本稿では高温において固相が関係する反応プロセスに関する著者らの研究結果をまとめた。これらはマイクロ波加熱利用による(1)金属酸化物の炭素還元,(2)金属 · セラミックス複合材料の製造,(3)燃焼合成反応の進行制御という事例である。これらの研究紹介とともに,そのプロセッシングに伴って生起する諸現象について紹介し,考察を行う。さらに,プロセッシングに対する影響,特色について議論する。

一般論文 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
  • 安部 寛太, 片野 聡, 太田 和親
    原稿種別: 一般論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 140-149
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    多官能性フタロシアニン金属錯体は,導電性,エレクトロクロミズムおよび液晶形成などの多くの用途に非常に有用であるため,近年,フタロシアニン誘導体の合成が非常に興味を引いている。以前我々は,フタロシアニン銅錯体のマイクロ波加熱による合成において,テンプレート効果が観察されなかったことに気づいた。これは,添加金属塩の誘電損失係数に起因すると考えた。しかし,希薄溶液中の金属塩の誘電損失係数を直接測定することは非常に困難である。基礎的なマイクロ波理論によると,マイクロ波照射により得られる熱量は誘電損失係数に比例するため,マイクロ波照射により到達した金属塩を含む溶液の最高温度は誘電損失係数の間接的な指標となり得ると考えられる。そこで本研究では,12種類の金属塩(MCl2, MSO4, M(OAc)2: M=Co,Ni,Cu,Zn)をそれぞれ含むグリセリン溶液にマイクロ波を照射し,マイクロ波照射によって到達した溶液の最高温度を各金属塩について測定した。次に,これらの12種類の金属塩を用いて,マイクロ波加熱により対応するフタロシアニン金属錯体(C8S)8PcM(M=Co,Ni,Cu,Zn)を合成した。その結果,大変興味深いことに,マイクロ波加熱による(C8S)8PcMの合成は,最高到達温度を与えた金属塩(反応種)の順番に,(C8S)8PcMの最高収率も与えることを見出した。これは,今後,マイクロ波加熱を用いた有機金属錯体の合成において重要な指針となるだろう。

  • 朝熊 裕介, 高橋 周, 前田 裕亮, 荒木 望, Agus Saptoro
    原稿種別: 一般論文
    2018 年 61 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    油中液滴内でのBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応をマイクロ波照射中,照射後観察した。この時,各液滴径に関して,マイクロ波照射時間,照射出力を変更し,熱効果および非熱効果が非線形反応に及ぼす影響を検討した。まず,小さい液滴では,その温度が周囲温度と同じになるため,マイクロ波照射中の反応促進効果が非熱効果であることが想定される。また,照射後の反応周期は,照射前の値に回復し,徐々に大きくなる。一方で,大きな液滴径では,マイクロ波が油相でほとんど吸収されないため,液液界面にマイクロ波が強く吸収される。そのため,照射停止後も,短い反応周期を維持したまま元の周期には回復せず,マイクロ波の照射履歴が残存した。このように,油相液滴内の反応制御には,マイクロ波照射出力,照射時間,液滴径が重要な因子であることを示した。さらに,液液界面を含む系において,マイクロ波照射の有効性を示した。

技術報告 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
  • 塚原 保徳, 渡辺 久夫
    原稿種別: 技術報告
    2018 年 61 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    第3のエネルギー伝達方法MTT(マイクロ波伝送技術: Microwave Transmission Technology)により,化学プラントのデザインを革新させ,マイクロ波プロセスが化学プラントのグローバルスタンダードになりうると考える。1980年代からマイクロ波プロセスは,省エネ,高効率,コンパクトの優位性が唱えられながら,2014年まで産業化が達成されてこなかった。マイクロ波化学(株)は,物理,電磁気,化学,エンジニアリングなどの人材を集め,プラットフォーム技術を構築し,会社設立から10年間でマイクロ波化学プロセスの実証と多分野展開の戦略をとってきた。2014年3月,世界で初めてマイクロ波化学プロセスを用いた化成品製造プラントを大阪湾岸地区に立ち上げ,2017年3月には,マイクロ波化学(株)と太陽化学(株)の合弁会社によるショ糖脂肪酸エステルプラントを三重県四日市に竣工した。本稿では,マイクロ波反応系の構築とマイクロ波反応器デザイン,つまりスケールアップ技術に加え,マイクロ波プロセスのグローバルスタンダード化を目指した事業化を紹介する。

  • 弥政 和宏, 塩出 剛士, 山中 宏治, 森 一富, 福本 宏, 石崎 俊雄, 塚原 保徳, 和田 雄二
    原稿種別: 技術報告
    2018 年 61 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    従来の内部加熱方式で用いられるマグネトロンに代表される電子管により励振されるマイクロ波は周波数安定度や位相コヒーレンスが低いために,空間内における電力合成が困難であることから,これら加熱炉内の温度分布の制御が難しいという課題があった。半導体マイクロ波電源によって励振されるマイクロ波は位相安定性 · 周波数安定性に優れているため,複数ポートを設け,各々から出力されるマイクロ波の相対位相を変化させることにより,アプリケータ内部の加熱分布を制御できると考えられ,これまでに様々な検討がなされてきている。筆者らはこれまで半導体マイクロ波電源を用いた位相制御による集中加熱の検討を行い,その実現性を示してきた。本報告では,複数のGaN増幅器モジュールを備えた半導体マイクロ波電源を用い,それら半導体マイクロ波電源から出力されるマイクロ波の位相制御によって,局所的に加熱が集中する領域を作り出し,その領域において化学反応を促進する実験を行ったので報告する。

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