2021 年 64 巻 5 号 p. 226-237
DME水蒸気改質反応は,DME加水分解反応(触媒: 固体酸)とメタノール水蒸気改質反応(触媒: Cu系)の逐次反応と考えることができる。両反応に特化した触媒をタンデム化することにより,DMEからワンパスで水素を製造することが可能である。前段反応であるDME加水分解反応の反応速度を向上させるために,300~400 ℃で触媒を運転することが想定されている。この温度領域は,通常のメタノール水蒸気改質反応の反応温度(200~300 ℃)に比べて高いことから,300 ℃以上で運転可能な高活性および高耐久性を示すメタノール水蒸気改質触媒を改めて見直す必要がある。本研究では,高表面積 · 高耐久性を有するスピネル型酸化物MgAl2O4に着目し,新規触媒前駆体であるMg1–xCuxAl2O4を開発した。この触媒前駆体を水素還元することで,スピネル型酸化物担持Cu触媒を合成した。合成したCu触媒は,固体酸触媒であるγ-Al2O3と複合化させることで,高いDME水蒸気反応活性を示すことが明らかとなった。Cu触媒とγ-Al2O3の混合割合を検討したところ,重量比で1~2の範囲に最適値があることが示唆された。さらにこの触媒が,空気中焼成によって再生可能であることを実証した。