Journal of the Japan Petroleum Institute
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総合論文
不飽和アルデヒド選択酸化反応に高活性な固体触媒の酸化触媒作用
石川 理史
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2025 年 68 巻 2 号 p. 37-45

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抄録

有用化学品の原料となるアクリル酸(AA)やメタクリル酸(MAA)は,対応する不飽和アルデヒド(AA,アクロレイン(ACR); MAA,メタクロレイン(MCR))の選択酸化反応によって主に生産される。ACR酸化反応では多元系Mo_V複合酸化物(MC-MoVO)が,MCR酸化反応では多元系Keggin型リンモリブデン酸(MC-PMo)が工業触媒として利用される。これらの触媒は優れた触媒性能を示すが,多元化による物質状態の複雑化により,その触媒作用の詳細はほとんど明らかにされていない。本稿では組成 · 構造が均質ながら,これらの反応に優れた性能を示す固体触媒,すなわちACR酸化では結晶性Mo3VOx複合酸化物触媒,MCR酸化ではピリジン含有Keggin型リンモリブデン酸触媒に着目し,これらの構造-活性関係を調査した。両触媒には,(1)結晶構造中に酸素欠陥を有する,(2)欠陥近傍の金属原子に電子が局在する,(3)分子状酸素導入によりこれらの電子が分子状酸素に移行し,親電子性活性酸素種としてのペルオキソが生成する,といった共通点が見られ,この種がこれらの反応の触媒活性種と結論した。これらの触媒と工業触媒の物性類似性を基に工業触媒の酸化触媒作用を考察した。

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