2026 年 69 巻 2 号 p. 118-132
新規化学プロセスや触媒材料のモデリングにおいて,システム同定がボトルネックになることがあり,観測可能性の制約,モデルの高い複雑性とメカニズムについての不完全な知識が予測モデルの構築を妨げることがある。本論文では,高次元パラメーター空間におけるNOx吸着プロセスのマイクロキネティックモデルの同定を対象に,Stein Variational Gradient Descent(SVGD)とHamiltonian Monte Carlo(HMC)を組み合わせたハイブリッド型ベイズ推論のフレームワークが構築され,その適用手法が提案されている。本手法では,まずSVGDを用いて粒子ベースの反発駆動ダイナミクスにより事後分布が効率的に探索される。そして,モデルの剛性による探索の停滞を解消するために,粒子再割り当て戦略が導入されている。さらに,収束の安定性を向上させるために,Root Mean Square Propagation(RMSProp)に基づくステッピング手法が採用されている。全体的な探索効率を維持しつつ,探索が停滞する領域では局所的な事後分布の解像度を高められる本手法を,Pd/Beta-ゼオライトを用いた新規NOx吸着プロセスのマイクロキネティックモデルのパラメーター推定に適用した結果,不確実性を考慮しながらも予測精度の高いモデルが得られた。Pd/SSZ-13ゼオライトを用いたNOx吸着プロセスのモデル · データに基づくベンチマークテストにおける優れた結果と併せて本研究で構築されたSVGD-HMCハイブリッド推論は,使用データ数が十分でないモデリングにおいてスケーラブルで解釈性の高い推論戦略を提供し,不確実性を考慮した高精度の予測を可能とすることが明示された。