2026 年 69 巻 5 号 p. 252-261
ポリ(L-アラニン)は,ポリ(L-乳酸)(生分解性ポリエステル)と構造が類似していることから,生分解性ナイロンとして期待されている。アラニンは,工業的製造法としてアセトアルデヒドをアンモニアとシアン化水素で縮合させて生成するアラニンニトリルから製造されている。この方法は石油資源と毒性の高いシアン化水素を使用する必要があり,L-アラニンとD-アラニンの混合物として生成する。資源的な制約を考慮すると,太陽光などの外部再生可能エネルギーを利用したバイオ由来化合物などの再生可能な原料から光学純度の高いL-アラニンを製造することが非常に望まれている。本研究では,電子供与体としてトリエタノールアミン,可視光増感剤として水溶性陰イオン性亜鉛ポルフィリン,亜鉛メソ-テトラ(4-スルホナトフェニル)ポルフィリン(ZnTPPS4−),選択的NAD+ 水素化触媒としてペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)および2,2’-ビピリジル(bpy)配位Rh錯体([Cp*Rh(bpy)(H2O)]2+),およびウレアーゼ(URE; EC 3.5.1.5)とL-アラニン脱水素酵素(AlDH; EC 1.4.1.1)からなる二元生体触媒とで構成される尿素とピルビン酸を原料とする可視光駆動L-アラニン生成系を構築した。この系においてL-アラニン生成効率向上のためには,UREによる尿素の加水分解に基づくアンモニア生成が重要な要素である。しかしながら,[Cp*Rh(bpy)(H2O)]2+がUREの酵素活性を阻害することが明らかになった。そこで,[Cp*Rh(bpy)(H2O)]2+ 濃度を最適化し,UREの酵素活性阻害を低減することができた。さらに,最適な[Cp*Rh(bpy)(H2O)]2+ 濃度を可視光駆動L-アラニン生成系に適用することで,照射時間中の安定したL-アラニン生成が達成され,5時間の照射後にはピルビン酸からのL-アラニンの収率が約25 %まで向上した。