2026 年 69 巻 5 号 p. 304-311
ウルバンは成長速度がとても速い緑藻ウルバ属(Ulva spp.)の主構成成分の多糖であり,バイオマス資源として有望である。本研究では,ウルバンの選択的解重合に対して,自己触媒法が有効であることを見出したので報告する。H型イオン交換樹脂を用いたイオン交換操作により,ウルバンの化学構造を保持したまま,そのカチオンサイトの約99 %をプロトンに交換し,プロトン化ウルバンを調製した。得られたプロトン化ウルバンを含む溶液を所定温度(140 ℃程度)に加熱したところ,ウルバンは解重合し,溶媒に水を用いた場合,ラムノース(32 C-%),キシロース(12 C-%),グルコース(6 C-%),およびグルクロン酸(10 C-%)などの構成単糖が得られた。この自己触媒法では,中性糖については従来の固体酸触媒法と同様にほぼ化学量論的に近い収率で得られるとともに,ウロン酸であるグルクロン酸収率も大幅に従来法と比べて向上し,フルフラール類の副生成物の生成は抑制された。一方で,溶媒にγ-ブチロラクトン(GBL)を用いた場合,フルフラール類の生成が増加し,140 ℃で5-メチルフルフラール(16 C-%)およびフルフラール(5 C-%)が得られた。それらの収率は,理論収率の約40 %に相当した。以上の結果は,プロトン化ウルバンを用いた自己触媒反応プロセスが,溶媒を変えることで単糖またはフルフラール類の選択的生産を可能とすることを示した。