2026 年 69 巻 5 号 p. 294-303
メタノール合成触媒とジメチルエーテル(DME)カルボニル化触媒を組み合わせたタンデム型触媒による合成ガスからの酢酸メチルと酢酸の直接合成は,高価な貴金属触媒ならびに腐食性で毒性が高いハロゲン系助触媒を使用せずに1ステップで酢酸メチルと酢酸を合成できるため,近年注目されている反応である。本反応系では二つの触媒上で連続的に反応を進行させることで合成ガスをメタノール,DME経由で酢酸メチルと酢酸に選択的に変換することができるが,後段のDMEカルボニル化触媒の活性が低い点が課題となっている。そこで本研究では,ピリジンを150 ℃から400 ℃で事前に吸着させたモルデナイト(MOR)ゼオライトにCuをイオン交換し,合成ガスからの酢酸メチルと酢酸の合成反応のための後段の触媒として使用した。ピリジンを事前吸着すると,Cu交換MOR触媒(Cu-MOR)の粒子形状とサイズならびにイオン交換したCuの酸化状態と存在位置が変化し,DMEカルボニル化に対する触媒活性が上昇することが分かった。230 ℃,5 MPa,空間速度5.2 L g−1 h−1で反応を行った時の酢酸メチルと酢酸の合計選択率と空間時間収率は200 ℃で処理した触媒を用いた場合に最大となったが,これはMORへのピリジンの事前吸着によりCu-MOR触媒上の活性なCu種の割合が増加したことが要因と考えられる。