抄録
筆者らは, これまでに芳香族炭化水素の液相アンモ酸化についていくつかの報告1)~3)を行ってきたが, 本報では, さらに液相アンモ酸化反応の研究の一環としてモノアルキルシクロヘキサン類をとりあげ, まずエチルシクロヘキサンについてこれまで同様2)液相流通式反応装置を用いて反応を行い基質炭化水素の反応性ならびにニトリル生成に対する各種反応条件の影響を調べ, また反応関連物質についても検討した。
使用したエチルシクロヘキサン0.133molからベンゾニトリルへの最有効反応条件は, 反応温度150°C, 時間10hr, 酸素流速4.5l/hr, アンモニア流速2.0l/hr, 溶媒としてのベンゾニトリル0.436mol, 触媒として酢酸コバルト3.2×10-3molとNH4Br4×10-3molであつた。反応温度の影響を (Fig. 1) に示したが, 図より基質炭化水素の反応率には大きな差が認められるものの, いずれの場合にもニトリルへの選択性は非常に高い値を示し, このような温度領域ではニトリル化反応への阻害はほとんどないことがわかる。また反応の初期からニトリル選択率が高い値を示す (Fig. 2) ことによりニトリル化反応の速度は速くかつ有効に行れていることが理解できる。
反応ガスの酸素については, 流速が増加するにつれエチルシクロヘキサン反応率ならびにニトリル収率に漸増傾向が認められ (Fig. 3), アンモニアについては一般に基質炭化水素の反応率に関与しないとされているが, 本実験ではアンモニアのほどよい存在が, 反応率の向上に一層の効果を発揮することが示唆された (Fig. 4)。反応におよぼす触媒の影響では (Fig. 5), (Table 1), コバルト触媒が, 特に優れた触媒活性を示した。しかしながら触媒の適量を越えた高濃度条件では, 基質炭化水素の反応性に顕著な低下傾向が認められた。なお, 本アンモ酸化反応においては, いずれの実験でもベンゾニトリル以外のニトリル類化合物の生成は確認されなかった。また主生成物がベンゾニトリルであることから本反応はエチルシクロヘキサンの通常の酸素化過程を通らないことが明白となり, 本アンモ酸化機構についても若干の考察を行った。