環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境ガバナンス時代の環境社会学
プロジェクト・マネジメントと環境社会学――環境社会学は組織者になれるか,再論――
茅野 恒秀
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2009 年 15 巻 p. 25-38

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抄録

現代の環境問題は,ローカル・グローバルにかかわらず,関係するアクターが増加せざるをえない問題構造を抱え,それがガバナンス構造の変化をもたらしている。その中で,環境社会学者がさまざまな問題解決のプロジェクトに,メンバーとしてかかわる事例が増加している。

筆者が2003年から運営に関与している赤谷プロジェクトも,その一例である。筆者は環境社会学を専門としつつ,自然保護団体に所属してプロジェクトの運営を担当し,地域住民・自治体,林野行政,自然保護団体,研究者,サポーターなど,多様な主体の協働で進むエコシステムマネジメントや自然再生事業の総合調整を行っている。

本稿では,筆者の赤谷プロジェクト運営の経験から,環境社会学がプロジェクト・マネジメントに果たしうる役割について考察した。プロジェクト・マネジメントには,「聞く」という技法から多元的な価値を合意形成のテーブルに引き上げるとともに,主体の意図やおかれた状況の理解を進め,また社会関係に基づく見取図を作り,問題を全体として把握し構造を明らかにすることができるという,社会学が特徴としてきた技法が有効である。環境ガバナンス時代にあって,環境社会学は積極的に組織者の役割を担っていくことで,問題解決志向性を強く文脈形成されている学問の個性をより引き出すことができると指摘した。

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© 2009 環境社会学会
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