2018 年 24 巻 p. 222-226
なぜ「震災ユートピア」なのか。原口弥生氏は「震災ユートピア」という副題に感じる違和感から6つの「物語」を読み解き,オルタナティブな実践として本書の「物語」を位置づけると同時に,「被災者の回復力」としての「語り書き」という観点から問いを投げかけてくれた。これとを受けて,本稿は,佐賀県鳥栖市をはじめ九州・沖縄地域における避難者調査から得た問題意識が,いかに『鳥栖のつむぎ』につながっていったかを論じる。そのうえで,本書が「一人ひとりのパーソナリティや震災前とその後の人生が分断されることのない手記」(原口氏)のかたちをとった理由を示したい。