環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学と「社会運動」研究の接点─いま環境運動研究が問うべきこと─
環境社会学と「社会運動」研究の接点――いま環境運動研究が問うべきこと――
青木 聡子
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2018 年 24 巻 p. 8-21

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抄録

本稿をはじめとする一連の特集論文はそれぞれ,第56回環境社会学会大会シンポジウム「環境社会学と『社会運動』研究の接点――いま環境運動研究が問うべきこと」での議論をベースに,議論しつくされなかったと思われる点を補いつつ執筆されたものである。特集の総論に相当する本稿では,後続の論文での議論に言及しつつ,「いま環境運動研究は何をすべきなのか」や「環境運動研究にしかできないことは何なのか」という問いへの応答を試みた。その際に,まず「環境」社会学と「環境‐社会」学という2つの環境社会学像を提示したうえで議論を進めている。双方において環境運動研究がいかに展開されてきたのかを確認することで,社会運動のなかでも「環境」をめぐって展開される環境運動にはどのような特徴や意義があり,そうした環境運動を対象とする研究にはどのような強みや困難さがあるのかを検討した。

その結果,暫定的な結論として,①環境をめぐる問題構築は他のイシューよりも困難であるものの,「環境正義」というフレーミングによってそれを克服できるかもしれないこと,②環境運動研究の実践性が他の社会運動研究と環境運動研究とを差別化する際のカギになること,③「人びと⇆自然」タイプの環境運動の研究に際しては,自然環境をめぐる不確実性が重要な論点になること,④順応的ガバナンス論の観点を取り入れると環境運動研究に奥行きが出ること,を指摘した。

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© 2018 環境社会学会
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