環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
小特集 震災をめぐる暮らしの連続性/断絶と環境社会学のまなざし
原発事故集団訴訟から「ふるさとの喪失」被害の可視化へ——環境社会学との協働を通じて——
除本 理史
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2019 年 25 巻 p. 142-156

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抄録

2011年3月の福島原発事故によって,周辺自治体は避難を余儀なくされ,9町村が役場機能を他の自治体に移転した。避難者は避難元の地域から切り離され,そこにあった生産・生活の諸条件の一切を奪われた。この「ふるさとの喪失」被害は,当事者の実感としては大きいにもかかわらず,第三者の目にただちにはみえにくい被害の典型である。

原発事故によって奪われたものの総体,つまり日々の暮らしを成り立たせている条件を可視化するのは容易ではない。地域丸ごとが避難した場合の被害は比較的わかりやすいが,避難指示が出されなかったり,現在のように避難指示の解除と帰還が進むと,被害がみえにくくなる。

本稿では,「ふるさとの喪失」被害の全体像を可視化するために少なくとも不可欠と思われる4つの着眼点,①生業と暮らしの複合性・多面性・継承性,②マイナー・サブシステンスの被害,③コミュニティ破壊と「地域生活利益」の侵害,④避難指示解除地域の被害,を提示する。また,「ふるさとの喪失」被害の回復措置と賠償の位置づけを整理するとともに,賠償と復興政策のあり方を問う集団訴訟の取り組みについて概観する。

被害の総体を捉えつつ救済を広げていくには,制度的枠組みにとらわれず,みえにくい被害を明らかにしていくアプローチとともに,制度の側から裾野を広げていくアプローチが不可欠である。この両面からの接近によって,被害の可視化と救済が可能になるだろう。そのためにも,学際的な協働が強く求められる。

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