2021 年 27 巻 p. 38-53
環境問題を扱う社会学は,当該問題の社会的布置を考えるうえで裁判には無関心ではいられない。本稿は,福島第一原子力発電所事故被害に対して,社会学および環境社会学が実証的・理論的に応答しうる事象について,「福島原発避難者訴訟」(2012年12月3日提訴,第1 陣)を例に論じるものである。この裁判は,福島県内外で提訴された原発事故避難者・被害者による集団訴訟の嚆矢であり,「福島原発事故は公害である」という明確な位置づけのもとで提訴された。本稿は,この裁判の控訴審で論点となった「故郷喪失・変容慰謝料」が「避難慰謝料」とは別個のものであることを「ふるさと剝奪」論から考察する。また,しばしば誤読・歪曲され,加害者側に与させられようとする「コミュニティ」概念を環境社会学の視点と研究手法からレスキューし,福島原発事故被害としての「ふるさと」と峻別しながら,「ふるさと」の法益を「土地に根ざして生きる権利」として提示する。そのうえで,社会学が持つ未来志向の生活再建・支援や地域再生・復興の議論は,法廷においては,環境社会学が得意とする〈加害─被害〉論の土台によって,その意図を十全なものとすることを論じたい。